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ドイツの詩1000篇とその解釈

最近買った本です。《1000 Deutsche Gedichte und ihre Interpretationen》(ドイツの詩1000篇とその解釈)という全10巻の本で、初版は1994年にインゼル社から出ています。ドイツの有名な詩や重要な詩が時代別に1000篇集められていて、さらに色々な研究者がそれぞれの詩に解説を書いている本で、とても読み応えがあります。

一番多くの詩が取り上げられているのはやはりゲーテで、第2巻一冊が丸々ゲーテの本になっています。他の巻は全てオムニバスですから、ドイツでゲーテがどれほど重要視されているか、分かります。ドイツに何年も住んだ身としても、ゲーテはなんだかドイツの文化基盤みたいな印象がありました。ゲーテは1000篇中111篇の詩が解説されています。面白いのは、現代の方になってくると、詩人であると同時に文学研究者ということもよくあるため、例えばゲーテの詩の解釈を、後半の巻で詩が取り上げられているヤンドルやクロロフなどが書いているところです。まあ、作曲家研究の本も作曲家が書いたりするので、考えてみれば普通のことなんですが、ヤンドルなんかはドイツで作品もよく読んでいたため、彼自身が他人の作品をどう読むのかなどはとても関心があります。

この本を買ったのは、主にドイツ・ロマン派の詩をより詳しく知りたいと思ったからでした。私が曲を付けたことがあるのはロマン派ではブレンターノとシャミッソーですが、他にも作曲家に人気のヘルダーリンやリュッケルト、アイヒェンドルフ、リルケなどを解説付きで読んでみたかったのです。まだ読み始めで、順番に読むよりも、めくって関心を持ったところから読んでいます。第1巻は中世のミンネゼンガーから始まっており、フォーゲルヴァイデなんかが中心です。実はこの巻に私が曲を付けたことのある詩が2篇も載っていました。一つはフォーゲルヴァイデの有名な《Under der linden》で、もう一つはデア・フォン・キューレンベルクの《Ich stuont mir nehtint spâte》という詩です。解説を読むと、デア・フォン・キューレンベルクは最初のミンネゼンガーの一人だそうで、詩の形態も古く、《ニーベルングの歌》などに共通点が見出せるそうです。こういう専門的な背景知識は詩を読むだけでは分からないので、嬉しいです。興味を引かれた詩だけ読んでいっても、なかなか色々な情報をもたらしてくれそうです。

詩はそもそもどの国の言語でも難しいイメージがあります。その言語の感性がある程度磨がれていないと、なかなか良さを味わうことが難しく感じます。特に実験的な表現が試みられるようになった現代詩などは、相当難しく感じるので、割と触らずに来てしまいました。この機会にと思って、近代以降のものからちょっとずつ読んでいるのですが、かなりインスピレーションをもらっていて、作曲に生かしていきたいと思っています。今のところ、オスカー・レールケ(Oskar Loerke)という作家の詩に音楽的着想を感じています。知らない作家でしたので、早速良い出会いをいただきました。

レールケの詩では《Ans Meer》(海辺で)と《Pansmusik》(パンの音楽、パン=牧羊神)という詩が、特に綺麗だと感じています。シマノフスキの音楽のような響きが聞こえます。近いうちに歌曲集の作曲に取り掛かるかもしれません。ちょっと他の作曲仕事が立て込んでいて、なかなか作曲スケジュール管理が難しいのですが…。シューマンやヴォルフがものすごく集中的に歌曲作曲に取り組んだように、私も歌曲をどんどん書く日が来るのかもしれないなと漠然と思っています。

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