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Balance Sheet 不況と日本化

1980年代のバブル経済を経験したのちに、「失われた○○年」と言われるほど、景気が持ち返さなかった(もしかしたらまだ全然持ち返せてもいない)日本経済。日銀の金融緩和(金利引き下げ)や日本政府の財政出動をどれだけ頑張っても、日本の景気が浮揚しない。所謂「日本化(Japanification)」という状態が、2008年の金融危機並びにこの度のコロナショックを通じて、欧州や米国にもみられるのでは、という記事を見ました。

日本化については、下記FTのビデオに解説されておりますが、例え景気浮揚のために金利低下を推し進めたとしても、人口の高齢化や人口減に伴う経済における総需要の低下、それに伴いインフレが起きにくくなり、従って自然利子率が下がること、もしくは上がりにくいという現象。その副作用として、中央銀行の金融政策の活用余地が少なくなる、といった見通しになることです。

またバランスシート不況はリチャード・クー(Richard Koo)氏による、有名な金融政策にまつわる経済理論です(アマゾンで購入可能)。端的に説明すると、日本のようにバブル崩壊後、日銀による金利低下に伴い、多くの資金を金融機関を通じて市中に流通させようとしても、借り手となりうる企業は既に多額の負債を抱えており、まずコスト削減と収益を通じた負債返済に注力し、例え金利が下がったとしても、直ぐに借入を増やすわけではない。内部留保を増やしている現代の日本企業のように、低金利という金融政策を通じた景気浮揚は必ずしも経済を動かすレベルで借り手には届いておらず、代わりに政府が債務を増やしながら国内需要を刺激する、といった現状があるわけです。

既に低インフレが続いている欧米諸国は、更なる人口高齢化に伴う低成長見通しと共に、企業レベルではバランスシート不況にみられる借入削減という行動の正当性に見出していくと、政府による財政出動に偏りが更に出てくる、といった具合に変化していくのかもしれません。

このような日本化は、必ずしも社会的な崩壊を意味しているわけではないですし、日本自体も政府債務はかなり増えていますが、日本国内の貯蓄(企業や個人)により買い支えられ、特に最近は日銀の購入が大きく寄与し、社会的には少なくともどうにかなっています。ただ低インフレ、金融政策の手詰まり、既に膨張している国家債務に伴う財政出動の躊躇等、このようなコロナショックに対する危機対応の耐性が弱くなってくる、といったことはつながっている気がします。


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