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ユースビオ社からの謝罪要求「政府の人間とつながりがあったから」は名誉棄損にあたるか?

こんにちは、スマート法律相談の弁護士のカツベです。

 新型コロナウイルスの感染拡大防止策で政府が配る布マスクの一部を調達した福島市の会社「ユースビオ」の代理人弁護士は13日、TBS番組での経済評論家、岸博幸氏の発言で名誉を傷つけられたとして、謝罪や損害賠償を求める通告書を11日付でTBSと岸氏に送付したと発表した。

確かに、随意契約で行政から仕事を請け負っているのに自社でマスクを製造販売していない状況は不自然で、その点の指摘は私ももっともだと思います。

しかし、「政府の人間とつながりがあったから」仕事を受けることができた、という言及までしてしまうと名誉棄損となってしまう可能性があります。

よく、本当のことを指摘したのだから名誉棄損にはならないというように誤解されがちですが、名誉棄損は「公然事実を摘示し」「人の名誉(社会的な評価)を毀損」することによって成立します。

つまり、〇〇社は政府の人間とつながりがあったから仕事を受けることができたという「事実」を公然(テレビで発言しています)摘示し、それによって〇〇社の社会的地位が低下したとしたら、もし本当に政府の人間とつながりがあったことが真実であっても、名誉棄損に該当する可能性があります。

ただ、(1)発言に公共性があり、(2)公益目的の発言であり、(3)真実性が認められる場合は、名誉毀損の違法性がなくなります。
名誉毀損発言をした側で(1)(2)(3)すべての事実の主張・立証が必要となります。

本件では、公共事業に関することなので、(1)や(2)は認められる可能性が高いですが、「本当に当該会社と政府の人につながりがあった」ことの立証は難しいでしょう。

裁判では、真実性の立証ができなくても、相当な資料根拠に基づいて発言したことを立証すれば名誉毀損の故意・過失がなかったとして名誉毀損が成立しないという結論になる(この辺の議論は刑事の名誉毀損罪と微妙に違いますが考え方はほぼ同じです)ので、その立証ができるかが結論を左右しそうです。

もし、当該コメンテーターが取材活動によって発言が真実であることを信じるに足りる相当な資料を得ていたのであれば問題ないということになりそうですが、単に憶測で「こういうケースはだいたい政府の人間とつながりがある」というニュアンスで発言したのであれば、相当な資料根拠の存在を立証することは難しいかもしれません。

今後TBS側がどう対応するかに注目したいと思います。

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