見出し画像

第27話 世界はノリと勢いで出来ている

 その後、渋る僕を無理矢理コートに立たせ、フルボッコにしながら尾張さんは、

「テニスの点数って謎よね。」

 と言い出した。
 精神的にも肉体的にもボロボロになった僕は、

「何がですか?」

 と、死んだような目をしながら聞き返す。それに対して、余裕の表情の尾張さんは、

「何故か1ポイント入ると15点入るじゃない。」

 と、サーブを打ちながら答える。

「まあ、そうですね。3ポイント目は10点に減りますしね。」

 なんとかレシーブを返しつつ、相槌をうつ。

「サッカーとかの試合なら一瞬で勝負が決まる点数よね。」

 こんなふうに。とつけたし、強烈なスマッシュを僕のコートに叩き込む。
 それを目の端に捉え、これでワンセットとられたなぁ。と思いつつ、

「でも、ラグビーとかも、点数計算複雑ですよ?」
 
 適当に話を続ける。

「あれは、得点方法が違うじゃない。」

「まあ、そうですけど。」

「テニスの場合、同じように得点してるのに配点が変わるじゃない。訳がわからないわ。」

 ラケットをクルクルと回転させながら、本当に不思議そうな顔をする尾張さん。

「尾張さんにもわからないことがあるんですね。」

 紀美丹君は私のことをなんだと思ってるのよ。と呆れつつ、

「理解はできるけど、何故そうしたのか意味がわからないじゃない。非合理だわ。」

 と呟く。
 
「まあ、でもテニスって、ワンゲームの得点と、ワンセットの得点があるから、多分混同しないようにしてるんじゃないですかね。」

「・・・・・・一理あるわね。紀美丹君にしては。」

「僕にしてはってなんですか。素直に褒めてくれてもいいんですよ?」

 尾張さんは僕を一瞥すると、目線を外し、

「それにしても、なんで15点ずつなのかしら。」

「スルーしないでくださいよ。どうせ、その場の勢いとかで決まったんですよ。」

「理解できないわ。」

 尾張さんは、その後、しばらく考え事をしていて上の空になっていたので、ここが好機と、いきなりサーブを打ち込んだが、余裕でレシーブを返され、僕はこのセットも落とすことになった。

「あなたの心を揺さぶる物語を。」  あなたの感情がもし動かされたなら、支援をお願いします。  私達はあなたの支援によって物語を綴ることができます。  よろしくお願いします。