#エッセイ(社会・人物・道徳)『魔が差す時』

   先週の朝一のニュースでチョッと驚くような記事が出てきました。ドジャーズで大谷選手専属の水原氏が解雇されるという内容でした。その記事を読んでいると、違法な賭博の為に大谷選手の資金を横領していたという、にわかに信じがたい内容です。出社前にいつも立ち寄っているコーヒーショップでその記事の題名を見ただけで僕は思わず飲みかけのコーヒーを吹き出しそうになりました。唖然として、”人は見かけによらないものだ“と思い絶句してしまいました。やはりどんな人にも裏の顔というものがあるのですね。それにしても、あんな目立つ人(大谷翔平選手)と仕事を共にしながらそんな事をするのか本当に疑問でならないというのが私の今の本音です。
 勤め人(サラリーマン)が仕事上(会社)で失敗する三つの事という話を聞いた事があります。それは、酒と金と女と言われているそうです。何となく分からないでも無いです。お酒でいうなら、酒の席で上司や大切な取引先の人に暴言を吐いたり、お金ならば会社の金の横領、もしくはお客さんのお金の持ち逃げや下請けなどの取引先に対するなたかりなどが直ぐに頭に浮かぶかと思います。そして女性については、職場での不倫から社内で揉めたり、取引先の女性に手を出して揉める、はたまた飲み屋の女性に入れあげてお金を擦るといったことがよく言われてたりします。この話はなにも“品行方正であれ”という事でも無くて、問題にならない程度に嗜みなさいという教えも込められていると聞いた記憶があります。でも、お金だけはキチンとしていないとイカンとは思うのですが・・。いうなれば、お金に関しては自分の持っている範囲のお金で楽しみなさいという事ですね。そうすれば道を外すという事も起きにくいでしょう。今回の水原氏の問題はまさに“お金”です。彼の仕事ははサラリーマンとはチョッと違いますが、雇われているという意味ではやはり勤め人です。そうすると彼もやはり上の三つの事でズッコケやすい立場でもあったのですね。
 今回の問題は賭博(賭け事)でした。私は殆ど賭け事をやらないのでその心理は分からないのですが、賭け事はのめり込むと大変になるとはよく聞きます。世にいうギャンブル中毒は買った時の味が忘れられずに負けても次に取り返すという心理になるそうです。そして勝ちを何回か繰り返すともっと大きく勝たないといけない気分になり、負けが込んでも“まだイケる”という気分になり、気が付けば雪だるま式に借金が増えていると言われるそうです。それは決して自分では改心する事が出来ないようで、これも立派な依存症だとの事です。それにしても年収が30~50万ドルの人が450万ドルもの借金を作るとはさすがに信じがたいです。日本円にすれば8億6千万円です。彼はどういうつもりだったのでしょうか・・・。一つだけ考えられることとして、水原氏のおかれた環境もあるのかと思うのです。彼の周りは高額年俸を稼ぐメジャーリーガーが沢山います。そして彼が日常共にして面倒を見ている大谷選手はとりわけ年俸が高いです。そんな人たちに囲まれていると金銭感覚も麻痺したのでしょうか。
 人が何か悪事に手を染めるという時、最初は”チョッとだけ・・”とか”一回くらい”という軽い気分で経験の為に手を出す事が多いみ。それを二度、三度と重ねるうちに依存的体質になるのだそうです。ギャンブルと覚せい剤はそんな傾向が強いみたいです。脳内で興奮する様な物質が出されて快感を味わとの事です。それがさらに強い快感を求め出し、中毒性に変わると止められないというサイクルになるのだそうです。しかし、自らの借金が6億を超えるとさすがに怖くならなかったのでしょうか?もし僕がその状況に陥ったら、日常生活で人の目を見るという事は出来なくなるのではないかと思うのです。ですがテレビの中の水原氏は、そう見えただけなのかもしれませんが、いたって普通に振舞っている様に見えました。心の中でドキドキを抱えていた半面やはりどこか感覚が麻痺をしていたのでしょう。だからこそ水原氏はその解決方法として大谷選手に頼ったのでしょうか。確かに大谷氏にしてみれば6億は小さな額かもしれません。それに、彼にとっては水原氏は大切なパートナーでしょう。これはもう水原氏の甘えとしか思えないのです。そんな安易な解決方法をとれば後で問題になる事は火を見るよりも明らかだったはずです。ギャンブルという最初はチョットした遊び感覚の賭け事が結果として自分の人生を台無しにし、助けを求めた恩人の人生にまで影響が及ぶという事をしでかしたのです。しかも今回の賭けは非合法な物だったためにさらに追い打ちをかける様な事態になりつつあります。水原氏はこの一連の出来事で二回魔がさしたと思うのです。まず一つ目は賭け事に手を染めたという事。もう一つはその解決に安易に人を頼ったという事です。
 ちなみにネットで『魔が差す』という言葉を調べると・・
”心の中に悪魔が入ったように、ふと悪念を起こす。思いもよらない出来誤頃を起こす。”
とあります。まさに水原氏はどこかで立ち止まるべき瞬間に魔が差したのでしょう。程度の差こそあれ魔が差すという事は誰の人生にもあります。その時、その瞬間に誰かが気が付いて止めてくれたり、自分で立ち止まれたりすればいいのですが、人がそんな瞬間を迎えると歯止めは聞かない事の方が多いのでしょう。
 世の中には考えを巡らせて悪事を働くという事も多々ありますが、それとは別にチョットした出来心とでもいうのでしょうか”魔が差す”という心理で何かをしでかすという事も往々にしてあると思うのです。ニュースで一報を聞いた時はその事の大きさに唖然としたのですが、その内側で事件を起こした人間がどんな心理であったのかという事は考えておくべきかと思うのです。
 ともあれ今は大谷選手に悪い影響が及ぼされない事を願うばかりです。

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