Indigo La Endと絶望

 いつの話だっただろうか、ツイッターで「エビと半導体」という言葉が話題になったのは。
 ハーバード大学かどっかの研究によって、創造的な思考が出来る人は「意味の遠い単語を組み合わせる能力」に優れていると言うことが明らかになって、その「意味の遠い単語の組み合わせ」の例としてTwitterで挙げられていたのが「エビと半導体」だったのだ、確か。
 他に考えられるとしたら「クリップとパン」「パソコンとロバ」「弓と歯」とかだろうか。残念ながらおれには創造的思考力がないので、たかだか3つ考えるだけでも結構時間がかかる。でもこれを創作のお題にしたら面白そうではある。貴方は「パソコン、弓、歯」を題材にして創作しなさい。関連性の無い単語を並べてお題にするのはなんか村上春樹の長編の章題みたいだな。

 ハードボイルド・ワンダーランド666666
─────パソコン、弓、歯

 こんなことを思うのはまさしく今「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」を読んでいるからだ。読み終わったら感想をここに書こうと考えている。書けるかどうかは別問題。

 ところでなんでエビと半導体なんて話題を持ち出したかと言うと、風呂に入ってIndigo La Endの「夜行秘密」を聴きながらふと「そうだ、Indigo La Endと絶望についてブログを書こう」と思ったからで、Indigo La Endと絶望という単語の並びからなんとなく「エビと半導体」を思い出したからだ。
 こう書くとIndigo La Endと絶望と言うのは意味が遠いと思っていると思われるかもしれないが(そして実際にはそうなのだが)、おれにとってはそうでもなく、Indigo La Endの音楽と絶望は多少結びついている。
 と言うのも、Indigo La Endの音楽を聴き始めた時期(≒いちばんIndigo La Endを聴いていた時期)が2020年夏で、当時おれは高校生で自分の頭の悪さに絶望していた頃だったのである。

 おれは高校生の頃、一応は県内で五本の指に入る自称進学校に通っていたのだが、陸上部の部活とレヴュースタァライト(神アニメ。人間なら一度は見ておいた方が良い)にかまけて勉強をこれでもかと言うほどさぼっていたので当然のように落ちこぼれた。一年の頃などあとひとつ生物の課題を提出していなければ最悪留年していたらしい。高二の時も物理のテストで百点満点中二点を取ったり、分配法則が分からずに「そんなんで大学なんか行けるわけねえよ」と教師に言われたりしながら三年生になった。
 そうして三年生になったぞ!サア大学受験だ、という段階になって初めて絶望するのであった。何せ周りの連中に比べて学力面でひと回りかふた周りぐらい遅れているのだ。これが持久走だったら体育教師なり先にゴールした優しい陸上部のやつなりがラスト数百メートル励ましながら並走してくれるかもしれないが、勉強の話となるとサボりまくって周回遅れしてる奴と一緒に並走してくれる人なんかいない。そもそも三年生になってようやく受験勉強を始めるって時点で終わりなのだ、多分。
 おれがIndigo La Endを聴き始めたのはそういう時期の事だ。
 放課後教室に残って勉強しながら、おれはIndigo La Endばかり聴いていた。実際には他にも色々聴いていたはずだが、何を聴いていたかと言われても全然思い出せないぐらいには聴いていた。おかげで高三の頃、自分が絶望していた頃のことを思い出す時、頭の中ではいつもIndigo La Endの音楽が流れることになる。
 夜行秘密の発売日(およびストリーミング解禁日)に至っては、無謀にも明○大学を受験した日で、試験終了後、不合格どころかほかの受験生と同じ土俵に立ててすらいなかったことを確信し、絶望しながら帰りの電車の中で聴いた。国立大学前日に大学近くのホテルまで電車で行く時もおれは「Crying Endroll」を聴いていた。

 こんな所まで読む人が仮にいたとしてその方はもうお気づきかと思うが、「Indigo La Endと絶望」と言うより「Indigo La Endと大学受験」と言った方が正しい。おれの現役生としての大学受験人生はほとんどIndigo La Endの音楽と一緒にあったと言っても良い。なんなら国立大学に落ちて、その後浪人していた時もIndigo La Endをしょっちゅう聴いていたので、おれの大学受験人生はほとんどIndigo La Endと一緒にあったと言ってもギリギリ過言ではない。そんな訳でようやっと大学に受かって春から大学一年生をやっている。全部Indigo La Endのおかげです。

 それ以外にも、しばしば音楽とそれを聞いていた頃の出来事が記憶の中で関連付けられていることがある。例えば中学生の頃、地元の祭りに友達と行った時に歩きながらイヤホンで聴いていたMr.Childrenの深海。高校二年の頃部活の大会帰りのバスで夏休みの課題の答えを写しながら聴いていた三森すずこの「holiday mode」。
 ところでおれは高二の秋あたりからアクタージュという漫画にハマっていた。高三の夏になんやかんやあって連載終了のニュースが流れてきた時、おれは無謀にも旧帝大オープン模試を受験するために、塾の近くにある親の実家に車で連れて行ってもらっていたところで、その時車内では当時発売したばかりの米津玄師の「STRAY SHEEP」が流れていた。また連載終了と時を同じくして、おれはディエンビエンフーというベトナム戦争を題材にした漫画にハマり始めた(お気づきだろうか、高三の八月に漫画にハマっていることに)。
 そういう訳でおれは米津玄師の「STRAY SHEEP」、特に一曲目の「カムパネルラ」を聴く度に、この二つの漫画のことを思い出すことになる。前者は「銀河鉄道の夜」篇と言うのがあってそれこそ主人公たちがカムパネルラを演じているからで、後者はただ単に歌詞が作品の雰囲気にピッタリなのだ。

「Indigo La Endと絶望」、「深海と縁日」、「陸上競技と三森すずこ」、「カムパネルラとディエンビエンフー」。どれもエビと半導体っぽいようなぽくないような。ぽくは無いか。結局意味の遠い単語同士であってもおれの中で連想ゲーム的に関連付けられる時点でエビと半導体では無いのだ。

 あるいはもしかすると、「新型コロナの影響で半導体が品薄になっているというニュースをエビを食いながら見ていたので、私はエビを食うと半導体を思い出します」みたいな人がいるのかもしれない。そんな人いたらちょっと面白いから会ってみたいけどね。

 つまり何が言いたいかと言うと、おれは頭が悪いと言うことです。

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