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ナメクジ喰らえ事件

『ハリーポッターと秘密の部屋』で、ハリーの親友であるロンが、ムカつく同級生のマルフォイに向かってナメクジ喰らえ!という呪文をかけるシーンを知っているだろうか。
呪文が自分に跳ね返ってきてしまったロンは、その後まるでしゃっくりのように定期的に口からナメクジが飛び出してしまう。

幼い頃に見たこのシーンはかなり印象的で、口にナメクジが湧いてくる感覚が気持ち悪かったが
今日人生で初めてナメクジ喰らえ体験をした。

◇◇◇

私が会話の中で避けている言葉の中に「ちゃんと」「きちんと」の2ワードがある。
この言葉から発される強い綺麗事感が苦手だったし、人によって程度が異なるのに共通認識のように使えてしまうことで、便利なお説教ワードになり得るところもかなり嫌いだ。

「ちゃんとしろ」「きちんとやれ」そう言われてもピンとこないのに、理解していない方がおかしい雰囲気になるような、他人を責める空気が生まれる。
正直、お説教するときに「きちんと」とか「ちゃんと」と言ってる人は、定義を明らかにする責任から逃れている浅はかな人間だと思っている。
かれこれ5年はこの言葉を忌み嫌ってきた。


ちなみに、日本アンガーマネジメント協会のブログでは、こういった言葉を「程度言葉」として叱る時のNGワードの一つだと紹介している。

それを知ったのはあるVtuberの動画がきっかけだが、知った時は
やはりか…まあ、私は何年か前に自力で気付いていたけどな(暗黒微笑)
と1人ほくそ笑んでいた。

◇◇◇

さて、勘の良い方なら気づくと思うが、
今日まさにその「ちゃんと」「きちんと」という言葉が口をついて出てきてしまったのである。

仕事中、業務の改善アイデアを話し合う会議。
その仕事に対してどうやってもやる気が持てず、脳みそがカラッカラに乾いて、嘘すらも出てこない状態だった。

そんなときに「この〇〇の仕事を、ちゃんと行いまして〜」と、口をついて出てきた。
その瞬間、本物のナメクジを吐き出したかのような吐き気があった。最悪の気分だった。

にもかかわらず、直後にもう一度「きちんと〜」と口に出してしまったのだ。

さっきあんなにリアルに吐き気を感じたのに何故!?!?と自分に驚きが止まらなかったが
本当に無意識に口から飛び出してくるのだ。
ロン、今ならお前の気持ちが本当によく分かる。今ならあの時のハグリッドのように、バケツを目前に置いてナメクジを受け止めながら全力で寄り添い介抱してあげられる気がする。

◇◇◇

1分前まで「こんな言葉を使うのは浅はかな人間だ」と思っていたのに、一瞬で自分が浅はかな人間になりさがった。

と同時に「そんなはずはない」と言い訳をする脳の分野が、高速スピードで最適な言い訳を探し始めた。
プライドの高さの分だけ言い訳のスピードを極めてきた私である。30秒ほどで結論は出た

「きちんと、ちゃんと、が口癖になっている同僚の存在がいるせいで移った」

たしかに事実だ。ここ何年か一緒に仕事をしている人で、この二つを多用する人がいる。
一緒にいて何度も言葉を耳にすることで移った可能性はかなり高い。


しかし。
ここでハグリッドの声が聞こえてくる。
「おまえさん、本当にそれだけが理由か?」
「本当は〜、自分に原因があると思うちょるんじゃないんか?ん?」
と。

そうだ。薄々気づいていたが
私がこの単語を使ったのは、単語が嫌いなこと以上にその便利さに負けたからだ。

思えば、「伊藤家の食卓」の裏技や時短、便利グッズというのはいつの時代も重宝されてきた。
そんな便利グッズが使われるのはどんな時か?
それはやる気が出ない作業を行うときではないか。
あらゆる時短・便利グッズは、時間をかけてまでやりたくない作業に対して作られる。

今回であれば対象の仕事を「時間をかけてまでやりたくない」という本音が強すぎたことで、ついつい便利グッズに手が伸びてしまったんだと思う。

◇◇◇

とはいえ口癖が移ったのも本当にそうだと思うので、なるべく環境を変えるか自分の考え方を変えて乗り越えたい。
口からナメクジが飛び出すような働き方を続けるわけにはいかないなあ、と感じた出来事であった。


やつはし

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