見出し画像

【天狼院書店初心者短編2020年4月コース受講者向け】⑧自分の使っている言葉で語る

【PR】

【注意】
 こちらのエントリは、天狼院書店さんで開催中の「短編小説100枚を二ヶ月で書いてみる」講座参加者の方向けのエッセイです。参加していない皆様にもなにがしかに気づきがあるかもしれませんが、このエッセイは基本的に「初心者の方が小説を書き切る」という目的設定をした講座に向けたものでありますので、中級者、上級者の方がご覧の際にはそうした点をご注意の上ご覧ください。
【注意ここまで】

 さて、講座を受けておられる皆様、執筆はお進みでしょうか。
 お進みであられない? なに、心配することはありません。まだ15日あまりあります。のんびりとやってまいりましょう。
 さて、実際に執筆に入る前に流通している小説を読んで、こんな悩みに襲われた人、いませんか?
「うわあ、小説って語彙がすごいなあ、こんなの書けるかなあ」
 はい、今日はこの話です。

 皆さんが普段読まれる小説は、色々な言葉を自由自在に用いて編まれたものであるのが普通です。
 でも、それは当然のことです。
 なぜ、って?
 WEBで発表されている(趣味の)小説や同人誌でもない限り、皆さんが目にする小説が「商品だから」です。
 皆さんも存在はご存じかもしれませんが、作家の背後には編集者という人が控えています。この人は「本を作り売る」というプロジェクトにおける核の一人であり、作家に適切な助言を与えたり、必要に応じて小説に必要な知識を知るヒントを授けたりする、総合プロデューサーみたいな立場の人です。編集者さんは他にも本を売るための仕掛けを行なったり、根回しを行なったりしますが、作家から見る編集者さんは「作家に適切な助言を与える」存在です。
 そして、編集者さんとは別に、ファクトチェックや文章チェックを行ってくれる校正の方がいますし、また作家によっては事実関係を調べるためのリサーチャーを雇っていたりします。
 何が言いたいのかというと、皆さんがふらっと書店さんに入って買った本は、編集者、校正さん、リサーチャーといった様々な人々の力を借りてブラッシュアップされた、洗練され切った「商品」なのです。

 注意
 とはいえ、大御所の方になってくると、あまりに作家として優れすぎていて、「小説を書く」ことについて手助けが要らないくらいの域に達した方もたくさんいらっしゃるそうです。そういうものになってみたいですが、それはさておき。

 そのため、最初に小説を書こう! となったとき、ロールモデルがあまりに完成され切った「商品」になってしまっており、新規参入の壁を阻んでいる面があります。
 そして、そうした「商品」を見た方の多くは、こう思ってしまうのです。

 難しい言葉を使うのが小説なのだ

 と。

 それはちょっと違う、というのがわたしの意見です。
 わたしは、小説とは難しい言葉を使うのではなく、

 「血の通った言葉」を使って作る

 ことなのだと思っています。
 どういうことか。
 きっと皆さんは、これまでの人生において、いろんな言葉に出会っていると思います。そして、おおむね言葉と皆さんの関係はこういう感じになっているのではと愚考します。

①意味を把握し、常日頃から用いている言葉
②意味を把握しているが、あまり使ったことのない言葉
③存在は知っているが、意味を把握していない言葉
④存在すら知らない言葉

 思うに、小説というのは、①~②までを用いて作られるものだと思っています。いや、実際にはもっと範囲が小さいです。小説は①を用いて作られるものといって過言ではありません。
 小説は、言葉という道具で以って物語を伝達する形式の創作物です。であるからには、作家自身が意味を十全に理解し、いつどんな時でも使いこなせる言語で作られるものです。
 中には
「えっ、②も使っちゃいけないの?」
 とお思いの方もいるでしょう。でも、いくら意味を知っていても、普段使っていないということは、「道具としての使いどころが分からない」ことを意味します。また、
「存在は知っているけど意味を知らない言葉も使っちゃダメなの?」
 とお思いの方もいるでしょう。
 でも、原則として、②や③は使ってはならない、というのがわたしの立場です。

 でも、それでは使える言葉が限られてきます。
 ならばどうするか。
 ②や③の言葉を、①にする努力をするしかありません。
 どうやって?
 実は皆さん、その方法は小学校の時に学んでいます。
 「本を読む」、あるいは「分からない言葉にぶつかったら辞書で調べる」。この二つです。そしてできれば、「分からない言葉の意味を知ったうえで、一つだけ例文を書いてみる」。こうやって、少しずつ①の言葉を増やしていく努力が必要になります。

 とはいえ、皆さんの多くは初心者であられます。
 この講座はあくまで最初の一歩の後押しをする講座です。
 ですので、わたしはこういう提言をしたいと思います。

 「意味を把握し、常日頃から用いている言葉」で、無理なく小説を書いてください

 と。
 もちろん、プロになりたい方が掲げる目標としてはちょっと低すぎますが、「何とかして小説を書き切りたい」という方なら、このくらいの目標設定にしたほうが根を詰めすぎないと思います。

 また、三回目の講座の時にいろいろお話しますが、書き終わってからも小説は手直しが可能です。
 なので、今はとにかく、肩の力を抜いて、最後まで書き終えるつもりで書き進めていただけましたら幸いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?