奇説無惨絵条々書影

【天狼院書店初心者短編2019年10月コース受講者向け】⑦小説は誰かへの手紙である

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【注意】
 こちらのエントリは、天狼院書店さんで開催中の「短編小説100枚を二ヶ月で書いてみる」講座参加者の方向けのエッセイです。参加していない皆様にもなにがしかに気づきがあるかもしれませんが、このエッセイは基本的に「初心者の方が小説を書き切る」という目的設定をした講座に向けたものでありますので、中級者、上級者の方がご覧の際にはそうした点をご注意の上ご覧ください。
【注意ここまで】

 小説とは何か。
 実は定義を提示するのが凄く難しいのが小説であります。例えば、「言葉を用いたフィクショナルな芸術・表現のうち、音韻のルールによる縛りの存在しないもの」を小説だと定義づけようとしますよね。けれど世の中には、詩の音韻を縦横に用いた小説はありそうですし、必ずしも小説がフィクショナルであるかといえば怪しいですよね(たとえば、著者の体験が描かれるし小説が存在します)。小説は自由な表現形態であるゆえに、今や何でも取り込んでしまってその全体像を捉えることが困難なのです。
 とはいえ、小説には重要な性質があります。

 それは、「書き手から読み手への伝達」です。

 言い換えるなら、小説は「書き手から読み手へと渡されるもの」という性質を有しています。実は小説は手紙と同じ性質を持つものなのです。

 これを意識してもらうことは、小説を書くにおいてかなり重要な視座となります。
 たとえば、皆さんが手紙を書くとき、相手が絶対知らないであろう言語で綴ったりしませんよね。相手の知らないであろうことを知ってる体で書いたりしませんね。もし相手が知らないだろうことを書く際には、「じつはこうしたことがありまして」と説明するのが人情ではないでしょうか。

 皆さんは初めて小説を書く方たちで(もちろんそうじゃない方もいらっしゃいますけど)具体的に読者さんの顔は見えていないと思います。そうした方はどうしたらいいのか。
 具体的な読者をイメージしちゃえばいいのです。
 わたしの知り合いの作家さんは「自分の高校生になる娘に喜んでもらえるような小説を」というのを合言葉にして小説を書いておいでです。確かに、扱うテーマや言葉選びは、高校生の人がストレスなく読めるであろうところに合わせられています。

 実際に見せる見せないは別にしても、「具体的にこの人に合わせる」というやり方は、案外外れないものです。
 あの人だったら、この説明で理解してくれるだろうか。
 あの人は、この展開を楽しんでくれるだろうか。
 あの人は、この書き方で満足してくれるだろうか。
 具体的に顔をイメージし、お手紙を書くように小説を綴っていくと、不思議とまとまりが出てきます。
 できることなら、家族や親しい友人をイメージしてみてください。そして、もし執筆にお困りの方がいらっしゃったら、その方に語り掛けるようにして小説を書いてみてください。すると、光明が見えてくる場合もままあります。裏を返せば見えないこともあるのですが、その際には……。うん、本を読むとか、運動するとか、家族と語らうとかしていただいて、リフレッシュしていただけるとよろしいのではないでしょうか。

 さて、2019年10月コースはもうそろそろ閉講となります。
 皆さん、進捗は如何ですか?
 まだ諦める時間ではありません。
 みんなでワイワイ頑張ってゆきましょう!

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