「ふつう」な自分を抱えながら

 WEB新連載の「桔梗の人」よろしくお願いいたします! と共に、2019年2月新刊の「奇説無惨絵条々」(文藝春秋)と文庫化「曽呂利」(実業之日本社)もよろしくお願いいたします。

 昨日の話とも関わってくるんですが、最近、「ふつうであること」の大切さに気付き始めています。そんなことを言うと「逆張り乙www」と草を生やされてしまいそうですが結構マジです。

 「ふつうではない」部分は他と己を分ける大事な個性であり、実はそこが作家性に繋がるというのは多くの方にご了解いただけると思います。実際、わたしにも何らかの「ふつうではない」ところがあり、そこが作家性となって表出しているおかげで今も作家をやっているのではないかと思っています。
 けれど、「ふつうではない」を提示してうまく行くのは、もしかするとデビューしてすぐのことなのかもしれません。

 「浮き彫り」という技法があります。目立たせたい装飾部分に段差を作る、彫刻的な技法ですね。たぶん、小説でも同じことが言えるのではないかと思います。
 個性というのはその人に刻まれた線画のようなものです。その線画を浮かび上がらせるためには、そうではない部分、すなわち「ふつうであること」に注目しなければなりません。「ふつうである」部分を自覚して、どのように「ふつうではない(=個性)」部分を目立たせるようにするのか、みたいな計算が必要になってくるんじゃあるめえか、というのが六年目作家であるわたしの問題意識です。

 つまり、「ふつうではない」部分を鮮烈に浮かび上がらせるためには、「ふつうである」部分をこそ大事にしなければならない、ということです。

 六年余り、ノリと勢いだけでやってきたという自覚があるので、もうそろそろクレバーに行きたいなあと思っている次第。 
 

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