見出し画像

【天狼院書店初心者短編2020年2月コース受講者向け】⑧あんまり描写をしない方がいい場面とは

【PR】

【注意】
 こちらのエントリは、天狼院書店さんで開催中の「短編小説100枚を二ヶ月で書いてみる」講座参加者の方向けのエッセイです。参加していない皆様にもなにがしかに気づきがあるかもしれませんが、このエッセイは基本的に「初心者の方が小説を書き切る」という目的設定をした講座に向けたものでありますので、中級者、上級者の方がご覧の際にはそうした点をご注意の上ご覧ください。
【注意ここまで】

 前回の更新

どういうときに描写を用いて、どういう時に端的な言葉を用いたらいいか

 という命題を残しました。
 さあ、今日はその疑問に応える時です。

 とはいえ、そんなに難しいことはありません。
 そもそも、わたしの講座を聞いてくださっている方は、少なくとも一つくらいは思い浮かぶはずです。

 まず大前提として、

視点から近い出来事や物について描写を濃くし、逆に視点から遠い出来事や物については描写を薄くする

 という原則があります。
 これ、要は遠近法と同じです。描きたい物事の中心にあるものはより詳細に描き出し、代わりにその中心からそれているものについてはそこまで細かく描写する必要はありません。もちろん作家さんの中にはすべてのものを逐一濃く描写する作風の方もいらっしゃいますが、そうした方でも、無意識に遠景にある事物は薄く描いています(正確には、そうした作風の方は、書きたい物事の中心だけを抽出し、その中で圧倒的なリアリズムを構築していると言い替え出来ます)。
 わたしが講座の中で繰り返し申し上げていたことに、「登場人物や物語の輪郭をしっかりつかんでくださいね」というものがあります。実はこれは、「このお話の焦点が奈辺にあるのか」を押さえておいていただきたいからなのです。
 絵に譬えるなら、壺を描きたいのに後ろの花に焦点が合ってしまっているのはおかしいですよね。「何を描こうとしているのか」が分からないと、実は描写の濃さ/薄さを制御することができないのです。

 と、ここまでは講義の際に説明しましたね。

 ここからが大事です。
 実はこの原則には例外があります。

 いくら事件の焦点だからって、あまり描写をし過ぎない方がいい場面も存在します。
 その一つがアクションシーンです。
 アクションシーンはスピード命で、とにかく端的に書いてあげた方がリズムも出てきます。また、くどくどと体の動きや心の動きを丁寧に描写するより、むしろ行動を端的に描いてやったほうが爽快感も出ます。
 あと、登場人物の死の間際とかも、あるいはそうかもしれません。
 特に、視点が登場人物に近ければ近いほど、あまり詳細に書いてしまうとリアリティが出ません。わたしは死んだことがないのでよくわかりませんが、死ぬ間際、多くの人は意識が混濁するようです。その感じを出すためにも、端的な言葉を選びつつ、あまり描写を重ねずに書いてやったほうが雰囲気が出るのではないでしょうか。

 でも、こうしてくどくど説明しても分からないかもしれません。
 描写の塩梅は職人の腕に関わる話なのです。
 もし、わたしの言っていることが理解できない方は、様々な小説を読んで、描写の塩梅を学んでみるとよろしいのではないでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?