刀と算盤

「文庫落ち」という言葉、どうなんでしょう?

 新刊「刀と算盤」(光文社)好評発売中です! と共に、2019年2月新刊の「奇説無惨絵条々」(文藝春秋)と文庫化「曽呂利」(実業之日本社)もよろしくお願いいたします。


 文芸界隈には、「文庫落ち」という言葉があります。

 これ、あくまで業界用語なので、ほとんどの方はご存じないのではないかと思うのですが、文庫落ちというのは、単行本で発売した本を文庫の形で販売しなおすことを指します。
 ふた昔前まで文庫が単行本の廉価版、ペーパーバック版という扱いであったことに起因した言い方だと思うのですが、わたしはどーもこの「文庫落ち」という言葉が好きになれないのです。ああ、こういうことを書くと、「他の作家に喧嘩売っとるんかいワレ」と言われかねないのですが、別にわたしは他の作家さんが文庫落ちという言葉を使っているからといって白眼視したり指弾したりするつもりはありません(というより、他人のなさりようにあまり興味がないというほうが正しい)。

 正直、わたしは文庫に関して苦手意識があります。
 これまで何作か文庫オリジナルを書かせていただきましたし、単行本からの文庫化も経験させていただきましたが、正直なところ単行本発刊の時以上の手ごたえはない、というのがわたしの肌感覚です。
 実際、「単行本と文庫ではまったく客層が違う」とおっしゃる方もいるくらいです。

 今度「曽呂利」(実業之日本社)が文庫化するわけですが、実は不安でいっぱいです。
 だからこそ、「文庫落ち」という表現を使いたくないのかもしれません。
「単行本を読んでくださっているお客様にもご好評をいただいた本ですが、文庫のお客様にもお気に召していただけるはず!」
 と、気持ち新たに世に出したいのかも。

 というわけで、文庫化します「曽呂利」、よろしくお願いいたします!
(まさかのステマ記事でした)

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