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【天狼院書店初心者講座2020年10月コース受講者向け】②「最初の種」の探し方

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【注意】
 こちらのエントリは、天狼院書店さんで開催中の「短編小説100枚を二ヶ月で書いてみる」講座参加者の方向けのエッセイです。参加していない皆様にもなにがしかに気づきがあるかもしれませんが、このエッセイは基本的に「初心者の方が小説を書き切る」という目的設定をした講座に向けたものでありますので、中級者、上級者の方がご覧の際にはそうした点をご注意の上ご覧ください。
【注意ここまで】

 講座を受けていらっしゃる皆さん、お疲れ様です。早くも講座から一週間、色々と小説について思いをいたしていらっしゃるのではないかと思います、いえ、そう思いたいです。
 えっ? まだ何もしていない? 大丈夫、まだ焦る時間じゃありません。のんびりやっていきましょう。
 今日は、書きたいという気持ちはあるのに、何を書いたらいいのか分からないという方に向けた小説TIPS、小説のネタ探しについての項目です。というわけで、行ってみよー!

小説の種は、あなたの中にこそある

 皆さんは自分探しってしたことありますか。
 恥ずかしながら、わたしはあります。
 あれはまだプロになる前、東日本大震災も起こっていませんでしたから、2010年の夏頃の話だったと思います。その頃のわたしは既に公募に小説を出していたのもののさっぱり賞にかすりもせず、おれってば才能ないんだなあとへこみ、書きたいものも見失うという絵に描いたような公募ウツ状態でした。そんな自分に嫌気がさし、夏休みを利用して東京から会津若松までを旅したのです。
 この頃は既に働いてもいたわけで、我ながら遅い青春を謳歌していたものだとおもばゆくもなりますねー。
 と、二十五歳にして自分探しをした谷津ですが、そこで一つ学んだことがあります。
「自分探しに意味はないのだ」
 と。
 環境を変えるくらいで自分の底なんて見えてきません。特に、夏休みを利用して行なうユルい自分探しなんざやるだけ時間の無駄というものです。まあ、何かを見て回るということはそれだけでリフレッシュになりますし、勉強にもなるので後々になって効いてくるものですが、本質的な部分を変えるほどの変化はなかったなあというのがわたしの感想です。
 さて、本題はここからです。
 わたしはいったい、自分の黒歴史を吐露して何を皆さんにお伝えしようというのか。
 それは、小説の種になるものは、あなたの外側にはないということなのです。
 これから小説を書いていく作業の中で、あなたの外側にあるものについて勉強したり、取り入れていったりする必要があるでしょう。しかし、それらは肥料や土に当たるもので、小説の種そのものはあなたの内側にしかないのです。

あなたの内側を眺める

 わたしは講座で「根源」の大切さを述べ続けたのは、実はこれが理由です。
 不思議に思いませんか? 歴史小説はたった一つしか存在しない史実を扱っている小説なのに、歴史小説家は何十人、場合によっては何百人と存在します。織田信長クラスになると、それこそ何十人もの作家が書いてきています。なのに、いつまでも描かれ続けるのはどうしてか。
 それは、作家それぞれに全く違う形の「根源」を持ち、同じものを別な風に眺めているからなのです。
 だからこそ、小説を書く(≒何らかのクリエイティブを行なう)際には、あなたは何者なのかという問いが欠かせないわけです。

自分という深淵の覗き方

 実は、そんなに難しいことじゃないんですよ。
 たとえば、人間や事物に対する好悪感情。これも、根源に繋がる重要な要素です。あの人が好き、ああいうタイプの人が嫌い、あの概念すごくエモい、あれはどうも受け付けない……。そういうものを突き詰めてみると、自分の思考・嗜好パターンが見えてきます。それが、あなたの物語の種になったりします。
 例えばわたしなんかは、気に食わない人の言動を作品に反映させたり、逆に好ましい人物の口吻を登場人物の肉付けにしたりしていますし、自分の数寄を作品に取り入れたりしていますよ。
 あとは、皆さんの買い物記録。これも、根源へのヒントが満載です。皆さんが無意識の中でやっている買い物、そこには皆さんの好きが詰まっています。皆さん、ぜひとも財布の中にたまっているレシートを広げてみてください。そうすると、皆さんが常日頃から購入しているものが見えてきます。もしかしたら、それが小説の種になるかも知れません。(たとえばですが、コーヒーの支出が多いあなたは、コーヒーに親しんでいるということであり、コーヒーをモチーフにした小説を書けそうですよね)。
 あとは、好きな映画やドラマやアニメ作品。皆さんも、一作くらいは「この作品が好き!」というおすすめの一作があるんじゃないでしょうか。そうした作品を思い浮かべていただいて、何に燃えたのか、何が琴線に触れたのかを考えてみてください。そうすると、あなたが何に心が震えるのかが見えてくるんじゃないでしょうか。
 あとは、しばしばあなたがフラッシュバックする風景や記憶。ありますよね。例えは自分の恋愛感情をばらされる、しかも妹に……という小学校五年生の秋の日とか(ああそれ俺だ)。皆さんの人生において、今でも思い出すだけで心が痛むこととか、時折思い出して幸せな気持ちになったるする一瞬があるのではないかと思います。そうしたものを種にすればよいのです。

 つまるところ、わたしが申し上げたいのは、自分の好悪感情や記憶から、最初の種を見つけてみてください、ということなのです。

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