奇説無惨絵条々書影

【天狼院書店短編講座受講者さん向け】書きあぐねたあなたに【最終回】オンリーワンの孤独と小説

 WEB連載の「桔梗の人」よろしくお願いいたします! と共に、2019年2月新刊の「奇説無惨絵条々」(文藝春秋)と文庫化「曽呂利」(実業之日本社)もよろしくお願いいたします。

 このエントリは、天狼院書店さんで4/27に開かれました短編講座の受講者さん向けのものです。基本的に小説執筆の初心者に向けた内容になっておりますので、もし講座を受けておらずこのエントリをご覧になった方は「あくまで初心者の方向け」であることをご理解の上読み進めてください。

 自分の小説を書く際に一番大事なコツはなんだろう。
 天狼院書店さんの短編講座を受け持つことになった際、ずっとそんなことを考えていました。わたしは小説を書くことを生業にしている人間なので、割と当たり前に文章を紡ぐことができますし、なにも考えていなくても(このnote執筆のように)言葉が溢れ出てくる状態なので、初心者の皆さんのお気持ちに疎い面が無きにしも非ずです。(念のため書いておくとこれは自慢ではなく、数を書けば必ずやこの域に達することができます)
 ただ、二十年前、小説を書き始めた頃のわたしを思い起こしてみると、きっとわたしはある種の生きづらさみたいなものを感じていたんじゃないかなあと思っています。
 ほかの作家はどうか知りませんが、わたしは自分の文章のへたくそさに怯えながら小説を書いています。それでも書き続けていられるのは、きっと小説が好きだからですし、自分にしか書けないものがあるという漠然とした自信があるからなんだと思います。

 一億二千万人には一億二千万通りの人生があり、それだけの性格があります。歌ではありませんが、人は生まれながらにもともと特別なオンリーワンなのではないかとわたしは思います。もっとも、その「オンリーワン」が世間に求められているものなのか、お金になるものなのか、他人に必要とされる個性なのかは別問題ですが、少なくとも、人はその「オンリーワン」のせいで悩み苦しみ、人知れず傷つくのです。
 そんなどうしようもない「オンリーワン」の孤独を癒すための道具として小説があるのです。自分の問題をフィクションの形で解いてゆく。このプロセスをこなしてゆくうちにあなたの「オンリーワン」の孤独が少しずつ和らいでいくのです。
 こうした働きを知ってもらえば、もしかするとこれからも小説に向かうモチベーションを維持できるんではないかなあと思っております。

 というわけで、これにて天狼院書店短編講座向けのエントリは終了です。講座にご参加くださった皆様、誠にありがとうございました。

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