桔梗の旗書影

2019年の仕事を振り返ってみる

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 年の瀬でございます。
 繰り返しになりますが年の瀬だろうが正月だろうが作家にはあんまり関係ない話なわけですが、ある程度世間様に合わせなくてはならないのもまた事実、また、年末年始は反省や抱負という名の自分語りが許される時期でもあります。えっ、お前はいつでも自分語りしているじゃないかって? 細かいことは言いっこなしだよベイビー。

 そんなわけで、今日は2019年刊行書籍に関して振り返っていきたいと思います。

単行本

 今年、単行本は三作刊行できました。

 『奇説無惨絵条々』は2年半くらい書き貯めていた短編集で、ここ数年の集大成的な一冊でした。おかげさまで『本屋が選ぶ時代小説大賞』にもノミネートし、面目を施すことができました。そこ、ノミネートくらいで喜ぶなんて志が低いとか言わない。

 そんな意味で、純粋にごくごく最近のわたしの仕事となったのが『廉太郎ノオト』、『桔梗の旗』です。『廉太郎ノオト』は書下ろし、『桔梗の旗』は2019年からの連載と違う形態でしたが、どちらも一職人として満足のいく仕事となりました。
 望外なことに、『廉太郎ノオト』は読者さんから熱狂的な声を聴かせていただくことが多い本でした。また『桔梗の旗』に関しては発売二週間弱での重版決定という、市場から好評でもって迎えられた小説となりました。実を言うと、ここ数年少し厳しい感じが続いていただけに、今年の単行本三作は色々な意味で幸せな経過をたどったと言えます。ありがたや。

文庫

 こちらも三冊出ました。

 三冊とも単行本からの文庫化です。
 実を言うと、これまで諸般の事情で「単行本→数年後文庫化」の流れが止まっていたため、ようやくこれで流れらしきものが出てきた感もあります。とはいえ、まだまだ文庫を買ってくださるお客様には認知されているとは言い難い状況。もう少し、文庫派のお客さまに認知していただくべくやっていかなくてはなあという状況であります。
 それはそうと、こちらの三作、「谷津の戦国三部作」と仮に呼んでいる一群の小説たちでございまして、三作がそれぞれに微妙に関係しあって成立しています。もちろんそれぞれに読んで楽しんでいただけても結構ですが、三冊読み比べていただいても楽しいのではないかと思います。
 単行本刊行時、『曽呂(ソロ)利』『三人孫市』の間に刊行された『ふたり十兵衛』(角川文庫)も刊行4年を経て小ロット重版しましたね。とまあ、実は2019年の谷津の文庫での動きは、ありがたいことに戦略的っぽく見える感じになりました(つまるところ、ただの偶然です)。

 とまあ、こんな感じで一年を振り返ったわけですが。
 反省はしません!
 こう言っちゃあれですが、作家が真に反省すべきは小説の出来不出来であって、そうした反省は日々行っています。だとすれば、年末に行なうべきは売り上げ的なお話になっちゃうかと思うのですが、そうしたお話は偶然やその時の市場状況、巡り合わせがかなり作用します。もちろん作家個人の宣伝活動やサイン会といった行動でもある程度売り上げに貢献することは出来ますけど、それはあくまでミクロ的な行動、出版というマクロ経済活動においてどれだけの意味を成すかというと……といったところです。
 もちろん、書店員さんや取次さん、版元さんの皆さん一人一人のお力添えで本が売れ、いつもお引き立ていただいている読者の皆様に支えていただいているのは間違いない事実。そうしたお一人お一人のご活動を否定する意図はありません。わたしが述べているのは、作家一個人の”宣伝活動”について作家が反省をする時間があるなら、新しい小説を書いたり編集者さんと小説について打ち合わせた方がなんぼかまし、という話でございます。
 特にわたしが狷介で知られる作家だけに……。

 というわけで、来年も職人としてはこつこつと積み上げつつ、個人的な宣伝活動を頑張りつつ、わたしの新作を待ってくださっている読者様のために力を尽くしてゆこうと思っております~。

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