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【天狼院書店初心者講座2020年10月コース受講者向け】⑦裏で起こっている動きに気をつける

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【注意】
 こちらのエントリは、天狼院書店さんで開催中の「短編小説100枚を二ヶ月で書いてみる」講座参加者の方向けのエッセイです。参加していない皆様にもなにがしかに気づきがあるかもしれませんが、このエッセイは基本的に「初心者の方が小説を書き切る」という目的設定をした講座に向けたものでありますので、中級者、上級者の方がご覧の際にはそうした点をご注意の上ご覧ください。
【注意ここまで】

 はい、受講者の皆様、執筆はいかがな様子でしょうか。
 執筆時においては講師であるわたしとしても、がんばれ! がんばれ! としか申し上げようがないのがつらいところなのですが、皆さんのカンフル剤となるよう、今週の小説TIPSを投下しますよ。

物語には見えない部分がある

 皆さんは映画を観ることはありますでしょうか。
 どんな映画でも結構です。あるいはアニメやドラマなどでも結構なのですが、これら創作物は、作品世界のすべてを描くことをしません。
 たとえば、それらの作品で、三食食べているはずの食事描写が省略されていたり、トイレや就寝シーンなども省略されていますよね。もちろん、それらのシーンが描かれている作品もありますけど、逐一主人公の行動をカメラが追っているわけじゃないことは、皆さんも直感的にご理解いただけるんじゃないかと思います。
 つまるところ、皆さんが目にしている創作作品は、制作者により編集され、重要性の高いものだけが残されている状態なのです。
 さて問題です。この、「重要性」とは、何に対する重要性でしょうか?
 引っ張るほどの問いではないのですぐお答えしちゃいます。正解は「ストーリー」です。
 この講座を受けてくださっている皆さんは、プロットをお作りになったと思います。これはすなわち、ある人物の直面した、最も面白そうな事件に関係ありそうなシーンを繋いだものなのです。つまり、プロットを組んだ時点で、皆さんはある程度作中世界の出来事を編集していると言えるのです。
 え? 言っていることの意味がわからない?
 ですよねー。
 もしわからない方は、こうご理解ください。いかなる創作物も、何らかの形で編集されているのだ、と。
 ということは、こういうことが言えそうです。
 物語には必ず、読者に見えない部分があるのです。

自分に引き寄せて考えよう

 こういう難解な言葉に出会った際、皆さんにやっていただきたいのは「自分に引き寄せて考える」ことです。これってどういうこと? と考え、つまり、こういうことだよね、と実例を思い浮かべることは、物事の理解が高まりますし、小説を書く際に非常に役に立ちます。
 たとえばですが、皆さんはこの前、わたしの講座を何らかの形で観てくださいましたね。でも、その後、わたしがどういう行動をしたか、ご存じの方はいらっしゃらないと思います。皆さんから見れば、二回目の講座の後のわたしは、もしかしたらラーメンを食べに行ったかも知れませんし、博物館に向かったかも知れませんし、あるいは実家に帰ったのかも知れません。とにかく、皆さんからは見えない以上、皆さんは明確なことが言えないはずです。
 実は、上記の言葉『物語には必ず読者に見えない部分がある』とはこういうことなのです。
 わたしたちは一人称の世界に生きています。そのため、自分の目の届く範囲のことしか認識できません。そのため、視界から消えた瞬間、わたしが何をしているのか見えなくなってしまうのです。
 で、ここで重要なのは、皆さんから見えていないとしても、わたしは何らかの行動を取っている、ということなのです。そりゃそうですよね。皆さんの目が離れた瞬間、わたしが煙のように消え失せているなんてホラー以外の何ものでもありません。
 ここで覚えておいてほしいのは、物語も同じだと言うこと。
 すなわち。
 プロットに書き出したストーリーの裏側にも、多くの人々の行動や事件が隠れているのです。

意識するだけでも違います

 この概念は覚えて帰ってください。
 先ほどもお話ししたとおり、どんな物語にも、描かれない行動や事件があります。いえ、正確には、描かれないものの方が多いのです。けれど、それはストーリー上の都合で見えない、あるいは見せないだけで、表のストーリーにも多少の影響を与えています。
 たとえば、皆さんの小説で、朝ご飯が食べられずに学校にやってきた友達がいたとして、そのことが明示されていないとします。でも、朝ご飯を食べていないということは、体育の時間ですぐバテてしまうことでしょうし、元気もないことでしょう。あるいはカリカリしているかもしれません。そう、このように、ストーリーの裏側にある物事も、表に影響を及ぼすことが往々にしてあるのです。
 上級者になってくると、これらのものを管理する場合(プロットと並行した表を作る)こともするのですが、あくまで皆さんは初心者。まずはストーリー(目に見える部分)に注力してください。その上で、「そういや谷津がそういうことを言ってたな」と思い起こしていただければ、ちょっとだけあなたの小説においしい出汁が加わります。

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