奇説無惨絵条々書影

単衣の衝動

 WEB連載の「桔梗の人」よろしくお願いいたします! と共に、2019年2月新刊の「奇説無惨絵条々」(文藝春秋)と文庫化「曽呂利」(実業之日本社)もよろしくお願いいたします。

 実をいうと、四月はちょっと悩み時でございます。

 わたしが着物男子(「男子」なんて年齢かはとりあえず目をつぶってほしい)なのは割と知られた話ですが、ぼちぼち暖かな日が続くようになり、袷(裏地も張り付けてある着物)から単衣(裏地のない着物)に着替えたいなあと思い始めるようになります。
 ここで着物に詳しい方だと「む?」となると思います。普通、袷から単衣への切り替えって五月から六月ジャネーノ、と。
 実は、歳時記的には六月一日が衣替えなんです。ところが、そんなことを言っていられないのがヒートアイランドと化した東京砂漠、四月の段階で単衣の誘惑にしてやられ、つい衣装箪笥を開こうとしているわたしがいます。
 まあ、礼服などは歳時記順守でいいと思うんですよ。でも、普段着までかちかちに言われてしまうとなかなか辛いものがあります。と言い訳しながら、四月の末頃からゴールデンウィークころまでには単衣にしてしまうのです。

 伝統の破壊?
 いやいや、現代に合わせた改善じゃい!

 そんなわたしも、さすがに衣替えした後に前の季節の着物を取り出すことはしていないので、なおのこと着物の切り替えには注意を払っている次第です。つまり、もう寒い日など来ないと胸を張って言える時が来たら……。

 実は、袷から単衣への切り替えって心軽いんですよ。どうしても袷は重いので、単衣の軽やかさが気持ちいいといいますか。

 というわけで、暖かい季節の始まりをなんとなく楽しみにしている今日この頃であります。

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