奇説無惨絵条々書影

【天狼院書店短編講座受講者さん向け】書きあぐねたあなたに⑤(公開しないなら)真似をするのも手です

 WEB連載の「桔梗の人」よろしくお願いいたします! と共に、2019年2月新刊の「奇説無惨絵条々」(文藝春秋)と文庫化「曽呂利」(実業之日本社)もよろしくお願いいたします。

 このエントリは、天狼院書店さんで4/27に開かれました短編講座の受講者さん向けのものです。基本的に小説執筆の初心者に向けた内容になっておりますので、もし講座を受けておらずこのエントリをご覧になった方は「あくまで初心者の方向け」であることをご理解の上読み進めてください。

 今回講座を受けてくださっている皆さんの多くは初心者の方であり、「自分のために」小説を書いている皆さんがほとんどです。実は、自分の今書いている小説を絶対に世に出さずに死蔵するという条件ならば、簡単に小説を書く方法があります。
 ずばりそれは、「好きな作家さんの真似をすること」です。
 それこそ、好きな作家さんの好きな作品とよく似たものを書けばよいのです。
 スポーツや習い事でもそうですが、まずは真似から入ります。そうして自分の中で型を作ってからそこから脱却するという形を取るのです。ところが、小説の場合だといきなりオリジナリティを問われてしまう傾向にあります。けれど、現在活躍中のプロアマ問わず作家と呼ばれる人たちは、影響を受けた作家の作品を読み込み、血肉にし、影響を受けながらその影響から脱してきたのです。
 具体的には、小説を書く際、あなたが好きな作家の本を座右に置き、何か困ったことがあればその本を開いてみてください。「この作家さんはこういうシーンでこういう解決を取ってるんだ!」「ああ、こういう描写の仕方があるのか」と真似していけば、つかえることなく書くことができます。


 ただ、ご注意いただきたいのは、そうして作られた作品はいわゆる「習作」と呼ばれるものでしかないということです。
 このエッセイは天狼院書店さんの短編講座の受講者さんの多く、つまりは「小説というものを書いてみたいけれど書き方がわからない」という方に向けて書いているのですが、本講座の中にさえ公募を目指しておいでの方もいらっしゃいましたし、このnoteは世界に向けて公開しています。プロ目指して研鑽中の方も必ずや見るはずです。
 だからこそ申し上げておきますが――。上で紹介した書き方を用いた小説は「剽窃」と言われかねないものです。逆に言えば、表に出しさえしなければ「個人の楽しみ」に回収されるものでもあります。
 繰り返しますが、上で紹介したやり方は、「小説の書き方がわからない」初心者の方に向けたものです。どこかに小説を公開する方、公募を目指している方にはお勧めできません。もし他作家の作品を参考にするなら、他作家のエッセンスを自らのものとして包摂するという作業が欠かせません。

 でも、「習作」を作るのは大事なことです。わたしだってデビュー前はいろんな作家さんの作風を真似したり、枠組みを借りたりして小説を書いていました。もちろん公開はしていませんが、これらの作業を経て、小説を作る楽しさを教えていただいた気がしています。
 でも、リスペクトがあるからこそ、そうした作品には「習作」のラベルを張って、長持の奥底にしまい込んでいます。

 この書き方は、書くことに慣れてあなたのオリジナリティが出てくるまでの過渡的なやり方だと思ってください。

 書くことの楽しさの一つに「パズルを作る楽しさ」があるという話をしましたね。初心者の皆さんにはまずこの楽しさを知っていただきたい。それゆえに、こうした方法もありますよとご紹介した次第です。

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