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長編手直し中の「俺って才能ねえんじゃねーか病」

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 今は随分慣れてきましたが、「手直し」には苦手意識があります。今でこそ編集者氏に「谷津さんは大胆に直してくださいますねー!」とハイテンションに言っていただくことがままあり、どうやら手直し作業が出来る作家として認識されているのですが、実際には、七転八倒しながらやってます。
 小説の手直しって、初稿・前回稿において見通すことのできなかった可能性を突き詰める作業なんです。
 案外知られていないことですが、始まりと終わりを決めていても、小説は無限の可能性を秘めています。これ、言うなれば、旅をするのにも似ています。東京から大阪に行こうと決めた際、バスで行く、車で行く、鈍行列車で行く、新幹線で行く、飛行機で行く、あるいは飛行機でフランスに飛んで観光してから大阪に行くなんて選択肢も採り得ます。当初、バスで行くルートで考え、実際に走った後で「あれ? あのとき他のルートを通った方がよかったんじゃないか」というときがあるんですよ。旅の場合は後戻りは出来ませんが、小説の場合は無限にその試行ができるので、「あのとき」の振り返りがしやすいんですね。

 と、こんな作業をしていると、「あーあ、実力のある作家さんとか天才作家さんはこの辺り、軽々と跳び越えられるんだろうなー」とやさぐれた気持ちにもなりますし、「俺ってば才能ないんじゃねえの」という内なる声に苛まれる羽目になります。
 今、絶賛その状況ですが、幾度となく手直し作業を繰り返す内、「とりあえず手を動かしまくればそのうちいいものになるだろう」という、諦観とも明日の自分に期待ともつかぬ心境に至るので、今回も概ねそんな気分でがりがり原稿を直しています。

 まあそのなんだ、才能がないならないで、頭使って手ェ動かしゃいいんだよ! という域に至り始めてます。個人的にはわたしこと谷津は、粘り強さによって質を上げていける小説というものが凄く好きです。

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