【天狼院書店初心者短編2019年10月コース受講者向け】④修飾の係り受けの問題について
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【注意】
こちらのエントリは、天狼院書店さんで開催中の「短編小説100枚を二ヶ月で書いてみる」講座参加者の方向けのエッセイです。参加していない皆様にもなにがしかに気づきがあるかもしれませんが、このエッセイは基本的に「初心者の方が小説を書き切る」という目的設定をした講座に向けたものでありますので、中級者、上級者の方がご覧の際にはそうした点をご注意の上ご覧ください。
【注意ここまで】
受講者の皆様、第二回の講座もお疲れ様でした。
通信受講の皆様も講義を聞いてくださいましたでしょうか。
東京会場での皆様にお話を伺った感じだと、かなり皆さんプロットが仕上がってきているようです。まだプロットが出来上がっていないという人も、もう出来上がっているよという人も、これからが本番です。プロットはあくまで自分の覚書に過ぎません。小説は、描き上げないと小説になりません。ぜひともピリオドをつけるところまで書いていただければと思います。
さて、昨日のご質問で、文章における修飾の係り受けのご質問をいただきました。まだ講座の様子を見ていない方はご覧いただければと思うのですが、今一つ要領を得ない回答をしてしまい申し訳ないことでした(もっとも、わたしの講座自体が今一つ要領を得ていないと言われればそれまでなのですが)。というわけで、この問題について、今回はねちっこくご説明しようと思います。
物事を説明する際、まず必要になってくるのが単語です。たとえば、
犬
ですね。
でもこれだと、どんな犬か分かりませんね。そのために存在するのが修飾語です。
白い犬
ここでいう「白い」が修飾語に当たります。犬のディティールを表現していますね。
でも、「白い」だけではまだ犬のディティールがはっきりしませんね。大きさは? 犬種は? はたまた性別は? あるいはどんな体格なの? そんなことを盛り込んでいくうちに、こんなことになっていきます。
白い長い手足の犬
さて、こうなった時、一つの問題が生じます。
ここでいう「白い」が、「手足」を修飾しているのか、「犬」を修飾しているのかという問題です。こうしたとき、どうしたらよいのか、また、こういう文章を書かないためにどうしたらよいのか、というのが先日のご質問でした。
一般に言われるのは、修飾語と修飾したい言葉を近づけるというやり方です。たとえば、「白い」が「犬」を修飾する場合、
長い手足の白い犬
とすればいいですし、「手足」を修飾したいなら、
長くて白い手足をした犬
と、「をした」と文章を整えてやって、修飾語の効く範囲を狭めればいいでしょう。日本語の修飾語は基本的には後に続く言葉を修飾する仕組みなので、こうした「効力の限定」が重要になってきます。
修飾語は修飾したい言葉の直前に置く!
こう心がけていただくだけで、分かりやすい文章になってゆくことでしょう。
たとえば、こんな文章はどうでしょう。
異常に晴れ渡った空の下での作業は暑い。
この文章における「異常に」も、「晴れ渡った空」を修飾しているのか、それとも「暑い」を修飾しているのかいささか不明です。もし「暑い」を修飾しているなら、
晴れ渡った空の下での作業は異常に暑い。
としてやればよいでしょう。では、「晴れ渡った空」を修飾したい場合には?
わたしだったらこうします。
異常なまでに晴れ渡った空の下での作業は暑い。
こんな感じでこそこそっと工夫するか、あるいは、文章そのものを見直します。「異常に」という言葉を諦めたり、文章を分割したりして、
観測史上類を見ない青天。その下での作業は暑い。
調えちゃいます。
この手の係り受けの問題として、文章を少しいじれば解決する場合と、むしろ文章を一度消してから対応した方がよい場合とがあるので、その都度その都度考えなければなりません。
そして、こればっかりは即効性のある鍛え方は存在せず、文章を読んだり書いたりする中で試行錯誤し、経験値を重ねてゆくしかありません。あるいは、中学国語の文法を勉強し直すのも手です。とはいえ、どちらもお時間がかかると思います。ですので、これから第一稿を書く皆様におかれては、「とりあえず係り受けに関してもある程度気にしていただきつつ、あまり囚われないようにしてガンガン書き進めてください」というのがわたしからのアドバイスになります。書いていくうちに、少しずつルールを覚えていけると思います。
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