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【天狼院書店初心者短編2019年10月コース受講者向け】③「主人公が○○して××になる話」という枠組みから小説を作る方法

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【注意】
 こちらのエントリは、天狼院書店さんで開催中の「短編小説100枚を二ヶ月で書いてみる」講座参加者の方向けのエッセイです。参加していない皆様にもなにがしかに気づきがあるかもしれませんが、このエッセイは基本的に「初心者の方が小説を書き切る」という目的設定をした講座に向けたものでありますので、中級者、上級者の方がご覧の際にはそうした点をご注意の上ご覧ください。
【注意ここまで】

 第一回目の講座から三週間が経っちゃいましたね。そろそろ企画・プロットに関してはめどをつけておきたいところですが、皆様、進捗はいかがでしょうか。
 とはいえ、まだ焦るターンではありません。というより、創作をやっていると、土壇場であれやこれやがドバドバ決まってゆき、「いったい悩んでいたあの日々は何だったのか」となることが往々にしてあります。でも、悩みに悩んだ人にしかこのドミノ倒し現象は起こりませんので、精いっぱい悩んでいただけたらと思います。もちろん、受講者の皆様にはお手伝いしますので。

 さて、わたしは講座で

y=(f)x

 の話をしました。これが小説の作劇の基本であり極意だよ、とも。
 これを言葉で説明すると、「xという初期状態から、(f)という経験を経ることによって最終的にyという最終状態となる」というものです。小説は基本的に、このプロセスが蓄積されたものであるといえます。そして、引いた目で眺めれば、「主人公が〇〇(経験)をすることによって××になる」話にまで抽象化できます、とご説明しました。

 例えばこれ、『桃太郎』なんかだと分かりやすいですよね。『桃太郎』の基本的な筋は、

 桃太郎が英雄的行動を行なうことによって英雄となる

 ストーリーです。これをどんどん膨らませてゆくことで、物語は成立しています。
 これをまず決めてしまうのが、すごく大事なのです。

 なぜかというと、これを決めることで、主人公以外の様々な要素がある程度定まってゆくからです。

 もしわたしが『桃太郎』の筋を一切知らず、上記の要素だけ手渡されたとしたら、こうやって作っていきます。

「英雄的行動」ってなんだ?
「英雄」ってなんだ?

 そう、y=(f)xでいうところの(f)とyに当たる部分の中身を考え始めるのです。

 たとえば、わたしが「英雄的行動((f))」に「ドラゴン退治」を入れたとしましょう。すると、次なる疑問を自らに課します。

「ドラゴン退治」と書いたけど、ドラゴン退治をするために、いったい何が必要だろう?

 もし空を飛ぶ龍なら、空を飛ぶ乗り物が必要かも? 龍の鱗は固そうなので、その対策が必要かも? 火を吐くはずだからその対策も必要かも? もしかしたら、仲間が必要かも? いろんなアイデアが浮かぶはずです。そしてそれらに逐一検討を重ねてゆきます。

 そうしてゆくと、

 空を飛ぶ乗り物 → 動物だったらどうだろう → 天馬?
 鱗対策     → 強い剣 → 剣をパワーアップさせるイベント?
 仲間      → 主人公が剣遣いなのでバランスを → 魔法使い

のように、少しずつディティールが浮かび上がってくるのです。
 こうやって、最初の「y=(f)x」に自ら疑問を科してゆくことにより、どんどん世界の様相が見えてくるようになってきます。
 だからこそ、「主人公が○○という経験を経て××になる」という、大枠の「y=(f)x」を作ることが大事になってくるのです。最初の構想段階でお悩みの方は、この部分をどうするかを決めていくと、最初のとっかかりを得ることができるんじゃないかと思います。

 小説を書くという作業は、自らの想定した「何か」に、自ら問いを重ねてゆく作業です。自らのボケに自らツッコミを入れていき、最終的にボケだけで立つようなものを作る作業、ともいえましょう。実は小説を書くのに必要なスキルは、高度なボケと高度なツッコミなのかもしれませんね。

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