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拙作『ぼっけもん 最後の軍師 伊地知正治』(幻冬舎)はこんな話

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イントロダクション

 さて、発売になりました『ぼっけもん 最後の軍師 伊地知正治』(幻冬舎)です。とはいえ、文芸書の発売日はある種の記号に過ぎません。倉庫からの搬出日だったり、首都圏の書店さんに届くであろう日であったりと版元さんによってその基準がまちまちで、著者もよく分かっていないところがあります。首都圏だと、今週末くらいには書店さんに出回るか否か……という感じではありますので、皆様、今週末辺り、拙作をお見かけの際には何卒よろしくお願いします。
 さて、本を買うにおいて、皆様は何を重視なさいますか? 表紙? 著者? でも一番気になるのは、なんと言っても内容ですよね(ド偏見)。というわけで、本作の内容について、つらつら書いていこうと思ってます。なにとぞです!

本書は戦記です

 本書の三分の一は戊辰戦争で占められています。伊地知正治という歴史上の人物が史上で最も大きな働きをしたのがこの時期だからなんですが、結果として本作は、戊辰戦争を戦う伊地知正治と官軍を主軸にした戦記小説になった感じがあります。伊地知の参加した鳥羽伏見の戦い(ただし伊地知は前線には出ていない)、江戸城総攻撃(ただしこの攻撃計画はのちに回避)、関東の宣撫戦(宇都宮戦争など)、白河口の戦い、会津攻め……と、戦争の嵐です。ドンパチの多い小説となりました。

本書は政治小説です

 本書の三分の一は、政治劇で占められています。伊地知は維新後しばらくして中央に出て、顕職を歴任しつつ、大久保利通のブレーンとして活躍していました。そういったこともあり、明治初年頃から明治十年頃の中央政府を描いた政治小説としても読むことができます。明治初期の政治的事件といえばあれですよ。廃藩置県とか、西郷隆盛が下野した明治六年政変とか、対外的なあれこれとか、そして大久保暗殺とかですよ! そういったものを主人公の目から傍観する(そして時に手を出す)小説になったのではないかと。

本書は友情の小説です

 伊地知正治は、西郷隆盛、大久保利通といった薩摩の傑物の陰で働いていたブレーンでした。西郷は伊地知のことをずっと「先生」と呼んでいたようであり、大久保はずっと身近なところに置いて意見を求めていた様子もあります。この三人には上下関係はなく、自由にものを言い合っていたようです。西郷は中央政府を離れ、大久保は中央政府を守る道を選びました。では、伊地知正治は何を願ったのか? そして、二人との友情はどのような変遷を辿ったのか? そんなことを考えながら書いた小説になっています。

本書は現代を描いた小説です

 本書の三分の一は戦記、三分の一は政治小説、では、残り三分の一は?
 実は本書には、明治十五年の鹿児島に暮らす伊地知とその弟子を描くパートが存在します。このくだりは完全にフィクションなのですが、そのパートにこそ、小説家であるわたしの願いが籠っています。
 明治十年代というと、大久保利通による有司専制(すごく平たく言うと独裁体制)が終わりを告げ、次の政治体制に向けて日本が次なる歩みを見せ始めていた時代でした。自由民権運動が高まったのと同時に政府がそれを危険視した時代でもありました。
 また、当時の鹿児島には彼の地ならではの事情もありました。明治十年の西南戦争によって疲弊していたのです。まさに戦後の焼け野原の中、新たな時代に向けて漕ぎ出そうとしていたのが、あの時代の鹿児島でした。
 もちろん前提は全く違います。文脈も違います。でも、わたしはあの時代の鹿児島に、現代に通じる「何か」を見つけたのです。
 そう、本書は現代を描いた小説なのです。

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