【天狼院書店初心者短編2020年2月コース受講者向け】⑦状態の描写しすぎも考えものです

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【注意】
 こちらのエントリは、天狼院書店さんで開催中の「短編小説100枚を二ヶ月で書いてみる」講座参加者の方向けのエッセイです。参加していない皆様にもなにがしかに気づきがあるかもしれませんが、このエッセイは基本的に「初心者の方が小説を書き切る」という目的設定をした講座に向けたものでありますので、中級者、上級者の方がご覧の際にはそうした点をご注意の上ご覧ください。
【注意ここまで】

 皆さま、原稿の進みはいかがでしょうか。
 じゃんじゃんばりばり頑張ってらっしゃることだと思いますが、執筆は本当に難しいものなので、もしかしたら手が止まっちゃったという方もいらっしゃるんじゃないかと思います。
 そうした方向けへのヒントとしてこのnoteは運営しているので、そうした方はこのnoteを読んでいただいて、ヒントらしきものを見つけていただけましたら幸いです。

 さて、講座では「描写の大切さ」を述べた記憶があります。確かに小説においては物事の描写がいかに正確でエレガントなものかを競う側面もあります。なのですが、「描写」という言葉を無意識に使っていると、あることを見逃してしまいます。

 たとえばなんですが、主人公の特徴について延々と描写し続け、それで100枚の小説を書いた場合、それは小説となりえるでしょうか。答えは否です。それは小説ではなく、文章による人物スケッチに過ぎません。

【念のため】
 小説に詳しい方だと、田中康夫『なんとなくクリスタル』はそういう小説なんじゃね? などと例が思い浮かぶかもしれませんが、あの作品は著者の精緻な計算、そして小説としてのたくらみに満ちておるがゆえに小説としてのバランスを維持している作品なので、初心者であられる皆さんでは成立させるのが相当難しいはずです。なお、そうしたツッコミができる方は、そうした小説が書ける方なので、もし書きたいものと合致するようなら書いてみるのをお勧めします。

 「描写」というとつい、登場人物や場の様子、すなわち何かの「状態」を描写することだと思いがちです。実際、描写してくださいと言うと、目に見えるものの状態を延々と説明するものに多く出会います。でも、実は、行動も描写の対象なんですよ。

 例えば、

 走る

 とかどうでしょう。
 その時の状況に応じて、いくらでも描写・修飾(言葉を飾ること)できそうですよね。

 ・重い足を引きずるようにして走った
 ・羽が生えたかのように足取り軽く駆け出した

 みたいに修飾してやってもいいですし、

・歩いているよりも早く、風景が後ろに流れ始めた。
・心臓の鼓動を感じつつ、僕は風になった。
・とにかく息が苦しい。肺が悲鳴を上げている。

 みたいにその時視点人物の行動を描写することもできます。
 まあ実は、これらの描写は行動の結果、視点人物に発生する状態を描写しているとも取れるので、実はどちらも「状態」を描写しているやんけ、という話ではあるのですが……。

 ここで皆さんにご了解いただきたいのは、描写というのは、キャラクターの顔立ちを目から鼻から口から、体型から着ている服まですべて紹介することではありませんし、今視点人物がいる場所に置いてある調度品の来歴や大きさや価格などを逐一書いてやることではありませんよ、ということです。

 それに、実は先に紹介した「走った」も、小説の中で使ってはいけないわけではありません。
 描写を用いるとどうしても文章が長くなり、かつ文章の趣旨がぼやけます。なので、少し離れた目で物事を眺めているときや、スピード感を出したいときには、むしろ「走る」などの端的な言葉を用いてやった方が効果的、なんてこともよくあります。

 えっ? どういうときに描写を用いて、どういう時に端的な言葉を用いたらいいかって?

 うーん、ではそれは次回のTIPSに加えるとしましょう。
 というわけで、待て次回。

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