奇説無惨絵条々書影

【天狼院書店初心者短編2019年12月コース受講者向け】⑤あなたが普段喋っているように書く

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【注意】
 こちらのエントリは、天狼院書店さんで開催中の「短編小説100枚を二ヶ月で書いてみる」講座参加者の方向けのエッセイです。参加していない皆様にもなにがしかに気づきがあるかもしれませんが、このエッセイは基本的に「初心者の方が小説を書き切る」という目的設定をした講座に向けたものでありますので、中級者、上級者の方がご覧の際にはそうした点をご注意の上ご覧ください。
【注意ここまで】

 年末に開かれました前回の講座にご参加の皆様、またビデオ受講してくださった皆様、大変お疲れさまでした。
 一応前回は第一稿執筆の話をしましたが、まだ構想がまとまらないという方は、焦って第一稿に当たる必要はありません。じっくり考えて執筆に当たった方が、後々の苦労はありません。また、講座でもご説明しましたが、小説を書くパッションは、「書きたいという思いが満ち足りる」ことによっても形成されるもので、構想はそのための準備です。なので、「小説を書きたくなってきた」というムラムラ感が出てくるまで、構想に取り組んでみてください。

 とはいえ、一応一月から執筆期間ということになっているので、こちらのTIPSでは執筆に関することをお話し始めます。その点、ご了解ください。

 文章を書くというのは、大変ハードルの高いことです。
 わたしにも身に覚えがあります。
 わたしは中学生のころから小説を書いていましたが、本格的に作家になりたいと思ったのは大学時代。その頃にブログを開設して毎日文章を書くようにしていました。その際に、

「文章ってどう書けばいいんだ」

 と壁にぶつかったのを昨日のことのように思い出すことができます。
 身もふたもないことを言うと、文章力は日々の蓄積の産物です。普段書き物をなさっておられる方と、今回小学校以来に作文をするという方ではまるでその精度が変わってきてしまうのは当然であるとさえいえます。講座でわたしは「文章に関することは技能である」と説明している理由であります。
 だからといって、「技能は盗んで覚えろ」と申し上げるつもりはありません。それだったら独習で小説を書け! ということになってしまい、小説講座の存在意義に関わってしまいます。
 そんなわけで、初めて小説を書く方向けに、ヒントを差し上げようと思います。

 ずばり、「普段、あなたが喋るように小説を書いてください」です。
 皆さんは普段、声を発することで他の人とコミュニケーションを取っていると思います。小説を書くというと、ついよそ行きの言葉を使ってしまいたくなりますし、美文を目指してしまいがちですが、実は現代の小説は「話し言葉」によって形成されているものです。プロの作品を読んで美文に感じられている方もいらっしゃると思いますが、これらの作品もまた、「話し言葉」を磨きに磨いて美文としている場合が多いのです。

 ここは読み飛ばしていただいて結構です。
 日本の文学史において、「言文一致運動」という動きがありました。江戸時代までは書き言葉と話し言葉が全く別のものでした。江戸時代の武士といえども、「○○でそうろう」とは話していなかったのです(そうろう、というのは書き言葉なのです)。そして、「言文一致運動」が支持され、現代小説の多くは言文一致、つまりは話し言葉で小説を書くというお約束でもって描かれているのです。

 とにかく、まずは「美しい文章」、「美文」といったことを忘れ、あなたが普段誰かに話しかけている、自分の使い慣れた言葉で書いてみましょう。背伸びをする必要はありません。
 例えば家族に、例えば友人に、例えばクラスや職場の横の席に座っている人に。特定の誰かに話しかけている言葉でもって書いてみてください。

 肩の力を抜くこと。
 わたしが申し上げたいのは、実はそこに集約されてきます。

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