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孤◯のグルメ 岐阜県海津市千代保稲荷神社参道の稲荷餃子と点心たち

岐阜羽島。いつも素通りしてたけど、初めて降りた。

(タクシーの運転手に)「おちょぼ稲荷までお願いします」

長良川を越えると、そこはのどかな田園地帯。ばあちゃんちを思い出すなあ。

そろそろなんじゃないか。……ううむ、参道らしき雰囲気がまったく見えてこない。まだだいぶかかりそうだな……。って、デカ!

(タクシーの運転手に)「ありがとうございました」

田園地帯に突然の赤鳥居。平日なのに、結構人いるなあ。

せっかくだからお参り。神社そのものは、思ってたよりも小さいんだなあ。

本名は「千代保稲荷神社」。でも俺、「おちょぼ」って響き、なんかとっつきやすくて好き。

ここは串カツとどて煮が名物なのか。見てたらなんか、腹が、減った。

ポン ポン ポン

よし、店を探そう。できれば食べ歩きではなく腰を据えていただきたいものだ。せっかくだからここでしか食べれないものがいい。冷静になれ、俺。ここはどこだ? そうだ、おちょぼ稲荷。稲荷。稲荷。あ……稲荷、見っけ。

「新名物 稲荷餃子」。何それ。気になるじゃあないか。店の名前は、「餃子工房いろどり」。工房という言葉のチョイスに職人味を感じる。ちょっと覗いてみるか。

「いらっしゃいませ!」

おお! いかにも美味い餃子を作りそうな風貌の店主だ。真剣に餃子と向き合いし幾星霜。雇われ店長には出せない風格を感じる。うん、これは期待できそうだ。

「あの、初めてなんですけど」
「でしたら、当店の餃子全種類をひとつずつ楽しめる『全7種お試しセット』がおススメです」

結構種類あるんだな。ひとまずそれを食べて、気に入った餃子をあらためて一人前頼むとしよう。

「じゃあ、それください」
「かしこまりました」

店内、カジュアル。おちょぼ稲荷の参拝客が小腹を満たしに立ち寄る感じか。

「お待たせしました」

うお! 美味そうじゃないか。見取り図が添えてある。こういう心遣い、嫌いじゃない。

まずは「ひとくち餃子」から……。おお。いい。でも一瞬の口福だ。

お次は「チーズ入り餃子」。餃子にチーズ? 油と脂のマリアージュ。ちょっと重たい組み合わせなんじゃないのぉ? ……あれ? サッパリしてる。不思議。箸休めにいいかも。

「えびぎっしり餃子」。そそるネーミング。どれどれ……あ、確かにぎっしり。小ぶりな見た目を裏切る食べ応え。いいじゃないか。

「じゅうしい餃子」。これだけ皮が分厚そうだな。ふたくちで行こう。……ん! 肉汁が飛び散った。

「ああ……お客さん、やっちゃいましたねえ(笑)」

店主……早く言ってよお……。気を取り直して……え、ウマ! 超じゅうしい。看板に偽り無し。タネより肉汁を楽しむ餃子。あ、だから皮が厚めなのか。納得。ビールが進みそうな味だなあ。まあ俺、下戸だけど。

お次は「いろどり餃子」。……うん、ウマシ。生姜の配分が絶妙。名前的にこれがお店のスタンダードだろう。

「とうがらし餃子」。世の辛党のニーズにも応える品揃え。店主のサービス精神と視野の広さを感じる。……辛! 結構辛いぞ、これ。でもこの存在感のある辛さ、固定ファン多しと見た。

さて最後の一品は、と。

「稲荷餃子」。これ、気になってたんだよなあ。さて、お手並み拝見と……。

え!? これめちゃくちゃ美味いぞ。油揚げに染み込んだ肉汁がじゅわーっと口の中に広がっていく。「じゅうしい餃子」とは違う、さわやかなじゅうしいさ。たかが油揚げ、されど油揚げ。イロモノと思うなかれ、多彩な餃子陣においてしっかりとレギュラーを張っている。さすが看板商品、「稲荷餃子」。これはリピーター多いんじゃないのお?

うーむ、まだ入りそうだな。メニューは、と……あれ? 焼売があるじゃないか。餃子屋が作る焼売。美味いに決まっている。

「すいません。追加いいですか」
「ありがとうございます!どちらにいたしましょうか?」
「えーと、焼売を……」

待てよ、小籠包なんてものもあるのか。この店、なかなかやりおる。

「あと、小籠包。それからノンアルコールビールもお願いします」
「かしこまりました!」

「お待たせしました!」

肉! 肉! まさに肉肉しさを楽しむ点心、それが焼売だ。こうなりゃ下戸でも炭酸が欲しくなる。……クーッ! ノンアルビールがある時代に生まれてよかった。

次は小籠包。かわいい。……おお! 皮、いい。噛みごたえ、神レベル。肉汁と厚皮を楽しむ点心。小籠包食べてたら、さっきの「じゅうしい餃子」が恋しくなってきたじゃないか。よおし……。

「すいません。稲荷餃子とじゅうしい餃子を単品で」
「かしこまりました!」

爽やかな「稲荷餃子」と濃厚な「じゅうしい餃子」のじゅうしい対決、結びの一番。ノンアルビールの炭酸が勝負を盛り上げる。俺の胃袋は今、両国国技館だ。いや、ここは名古屋圏が近いから、さしづめ愛知県体育館といったところか。岐阜なのか、愛知なのか。そんなことはどうだっていい。あるのは、おちょぼ稲荷と餃子だ。

「ごちそうさまでした」

うーん美味かった。俺の見立てに間違いなし。この店主、こう見えて凄腕だ。

「今度はぜひ月末にお越しください。『月越参り』といって、深夜まで参道がお祭りのように賑わうんです。その日はお店も遅い時間までやってますよ」
「へえ」
「一月の参道は日中ずっとすごいですよ。新宿駅かと思うくらい」
「ほぉ。……もしかして、以前は東京にも?」
「ええ。各地を転々としましてね。20回引っ越しましたよ。生まれは東北なんですけど、縁あってここに流れ着きました」

みちのくから濃尾平野へ。人生いろいろ、餃子工房いろどり。経験豊富な店主が織りなす多彩な餃子たち。そうだ、今度お取り寄せしてみよう。さて、そろそろ岐阜羽島駅に戻るとするか。

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