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「寝具の廃棄問題」について

自己紹介

私たちは、岩手で布団の製造・リフォームを行っている株式会社やよいディライトという企業です。
やよいリビングという寝具店を運営しています。

中身が見えない寝具だからこそ、嘘偽りなく「一人一人の想いを形に」を大切にしています。
リフォーム実績は累計4万枚以上になりました。
【岩手県認定】再生資源製品取扱
【いわて女性活躍認定企業等】ステップ1 認定

職人が丁寧に手作りでつくる最高の一点物をご提供。
私たちがお預かりするのは、たくさんの想いが込められた布団たち。その布団を再利用したリメイク品。
親から子へ、そして孫へ受け継いでいきたくなるような温かいものづくりを目指しています。

寝具ブランド tsumugi




1億枚廃棄される布団

日本で焼却廃棄されている寝具は、推定で年間1億枚と言われています。
たくさん作り、たくさん捨てられているのが寝具業界の現状であり課題です。

寝具業界の課題

東京都では粗大ごみで一番捨てられているのが「ふとん」というデータがあります。※東京二十三区清掃一部事務組合様提供データ19ページ参照

https://www.union.tokyo23-seisou.lg.jp/jigyo/renraku/kumiai/shiryo/documents/03gigyonenpou.pdf

私たちは、この現状を変えたいと考えております。
具体的には寝具を廃棄するのではなく再生させて必要なところへ届ける事業を行いたいと考えています。
そして、リサイクル率を2%という現状を2030年には10%以上に引き上げたいと考えています。

すこし布団の話をします。

布団には様々な種類があります。
・綿布団(コットン100%)
・混綿布団(コットンとポリエステルなどの化学繊維の混綿)
・化学繊維布団(ポリエステルなどの化学繊維)
・羽毛布団(水鳥の羽毛)
・羊毛布団(羊の毛)
・キャメル布団(ラクダの毛)
・真綿布団(シルク)

綿の種類
羽毛の宝石といわれるアイダーダックダウン

現在、これらのたくさんの種類が中で市販の製品はほとんどが「化学繊維のふとん」となっています。
これは寝具に限らずアパレル業界においても同様で市販されている多くは洋服も化学繊維でつくられています。

なぜなのかといいますと、化学繊維は安く、つくりやすいため「大量生産」に向いているためです。
オートマチック加工と言い、ほとんどの作業を機械が行ってくれるのでつくるのにスキルが必要ありません。
企業側からするとできるかぎり原価を安くしたほうが儲かりますので、人件費の安い海外に工場を建て、大量生産し、それを日本へ輸入します。
しかし、その方法ももう通用しなくなってきています。海外でつくったほうが輸送費などがかさみむしろ高くつくケースも出てきました。


化学繊維の寝具のメリットとデメリット

【メリット】
 〇安い
 〇洗いやすい(化学繊維を洗濯するとマイクロファイバーは出てしまいます。)

【デメリット】
 ✖吸湿性がほとんどない睡眠に悪影響。
  (汗を吸いません。蒸れは音と光に匹敵するストレスになります。)
 ✖静電気が比較的発生しやすい
  (ほこりを吸着しますのでアレルギーの方にはきつい。)
 ✖へたってしまうともとにもどならい
  (繊維が伸びているため)
 ✖再生工場が少ない
  (直すことが難しい)

見ていただくとデメリットのほうが多いのです。

これらのデメリットが影響し、結果どうなったのかというと
繰り返しになりますが寝具については「年間廃棄枚数1億枚」まできてしましました。

化学繊維を含めることで「強度」と「お手入れのしやすさ」が向上することもあるので100%化学繊維の寝具を否定することはありません。
弊社でも使用している寝具をつくることもあります。

しかし、
「質の良い睡眠が取りたい方」
「お肌が敏感な方」
「環境と社会に優しいものを使いたい方」
は天然繊維の寝具を使うことをおすすめします。

天然繊維の寝具のメリットとデメリット

【メリット】
 〇適度な保温性と吸湿性があるため睡眠に良い。
  (寝床内を適度な温度にします。そして汗をぐんぐん吸います。)
 〇静電気が比較的発生しにくい
  (ほこりを吸着しにくいためアレルギーの方にやさしい。)
 〇オーガニック綿でつくると化学物質過敏症の方でも使えるものになる。
 〇へたっても日に干すことで放湿し回復する。
 〇再生工場がある。
  (直すことができる。)

【デメリット】
 ✖天然物なので化学繊維より高価
 ✖水洗いによるお手入れがしにくい

布団は本来寝るために存在します。
ですので、気持ちよく寝れたほうが悪いより絶対良いですよね!

下記、和歌山県立医科大学の池田先生の講演資料です。

実験の結果、「コットンのほうが化学繊維の布団よりも覚醒時間が短く、睡眠時間が長く、睡眠に良い影響があることが示唆された」と結論づけています。

ふとんを20年使用するときのシミュレーション

【化学繊維の場合】20年で合計8万円~16万円程度
 ①敷布団を購入(1万円~2万円)
 ②3年:へたってしまったため買い替え(1万円~2万円)
 ③6年:へたってしまったので買い替え(1万円~2万円)
 ④9年:へたってしまったので買い替え(1万円~2万円)
 ⑤12年:へたってしまったので買い替え(1万円~2万円)
 ⑥15年:へたってしまったので買い替え(1万円~2万円)
 ⑦18年:へたってしまったので買い替え(1万円~2万円)
 ⑧21年:へたってしまったので買い替え(1万円~2万円)

廃棄回数:7回(※個人差があります。)

【天然繊維の寝具の場合】20年で5万円~10万円程度
 ①敷布団を購入(2万円~)
 ②7年後~10年程リフォーム(1万5千円~)
 ③7年後~10年程でリフォーム(1万5千円~)

廃棄回数:0回(個人差があります。)

商品を並べて比べて値段だけ見ると高価に見えますが、実はそうではないのです。

天然繊維の寝具は大切な資源

天然繊維のふとんに使用されている原料はどれくらい使われているか想像できますでしょうか?

綿布団の場合は、例えば敷布団1枚つくるのに「約100坪分の綿畑」が必要です。
羽毛布団一枚つくるのに「100羽から200羽の水鳥の羽毛」が必要です。

布団をつくるのに必要な原料 ※原料の違いで変動はします。

年間1億枚廃棄されているふとんはほとんどが化学繊維のふとんですが、中には貴重な原料が使われているふとんもあります。

布団につかわれるこれらの原料は植物や動物からいただいたもので、本来簡単に廃棄するべきものではないと考えます。


コットン(福島)
水鳥を飼育している様子(岩手)

ヨーロッパの方たちは生まれた子どもに羽毛布団を贈る

その子の成長に合わせてリフォームします。
ベビーや幼稚園サイズから大人用へ。
結婚したらサイズを広げて2人で使える布団へ。
そしてまたリフォームして1人で使える布団へ。
もしくは、次の世代の方にプレゼントする布団へ。

こうやって長い間リフォームしながら使い続けることが当たり前の文化として成り立っているのです。

そして私たち日本人も実はそのような文化があったのです。
それが綿布団の「打ち直し」と呼ばれるものです。


打ち直し

綿布団も羽毛布団同様、打ち直し(リフォーム)して形を変えながら長い間使い続ける文化がありました。


弊社でお仕立てした打ち直し、リメイク品のごく一例



日本ではこの打ち直しという文化が消えつつあります。

しかし、よく考えてほしいのです。これだけ捨てられている寝具は、天然素材の宝庫なのです。
廃棄して焼却してしまえば灰と二酸化炭素になってそれでおしまいです。
もう二度と使えなくなってしまいます。


再生後の用途は様々

これだけ多くのメリットがある天然繊維の布団。

その素材は寝具以外にも活用方法があります。

綿布団を再利用して様々なものがつくれるのです

しかし、それを知らずに廃棄に出してしまう方もまだまだたくさんいらっしゃるのですが、それは私たちつくる側がしっかり情報を発信していなかった責任でもあると考えています。

毎年たくさん廃棄される寝具ですが、日本全国のご自宅にはまだまだ布団は眠っています。その数およそ10億枚といわれています。

その中に天然繊維の布団がたくさんあるはずです。

それを廃棄するのではなく、再生に回し、必要としているところへ提供する。

私たちのこれまでの取り組み

児童養護施設様へ寝具を寄贈(2015年~)

岩手県の児童養護様に寄贈させていただきました

災害用寝具お届け(2021年~)

大槌町様へ寄贈させていただきました

まだまだ行き届いていない施設様も多く存在します。今後も少しずつではありますが、未来の子供達や必要とする方の力になれるように寄付を続けていきたいと思っております。

まとめ

質の良い睡眠がとれて、使うときに心地よい、廃棄物を減らし、日本国内の雇用と技術を守ることにつながる天然繊維の布団の素晴らしさをこれからも伝えていけたらと考えています。

SDGs to 未来⑮ 寝具の廃棄物問題 2月28日放送

今後は寝具のリサイクル率を大きく高めるための「事業」を行いたいと考えております。
持続可能な社会の実現のために私たちに何ができるのかを考えていきます。最後までお読みいただきありがとうございました。
それではまた次の記事にて。

やよいliving
経営戦略部チーフ 羽田流星

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