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ヤギさん郵便No.78「男のプライドが見えた瞬間」


久しぶりの泊まり山行は西日本最高峰石鎚山でした。
岩場に設置してある鎖を使って登る事ができる修験道の山である。

石鎚山には、試しの鎖、一の鎖、二の鎖、三の鎖と鎖場は四ヶ所あり、
試しの鎖が登れたらあとは登れるという名前のとおりのお試しの鎖。でも試しが一番大変かもしれないそんな鎖場です。


私たちの登山パーティも試しの鎖に着きました。
年配の男性Hさんは、いつも怒っていないのに怒っているように聞こえる感じの60代後半のズカズカ言いたいことを言うタイプの人です。
今回も班のリーダーで先頭を歩いていました。もちろん鎖場も先頭で登ります。私は後ろから二番目を歩いていましたが、鎖場で尻込みしたメンバーから先に登ってほしいと言われました。

Hさんの後を登る。
Hさんは岩で足を何度も滑らせていた。鎖を持つ手だけに頼って登っているように見えた。
その時、汗が滴り落ちたのが見えた。何度も何度もポタポタと落ちた。
暑い?‥いや、暑さではなくそれは冷や汗だと気がつくのにそんなに時間はかからなかった。
怖いのだろうか?滑る足に慌てているのだろうか?
そのままHさんは、ひと言も発することなくズルズルと登っていった。
いつもはメンバーに意見やアドバイスをいう立場にある手前、弱音は吐けないのであろう。
プライドが許さないのであろう。

意地や男のプライドなんて時代遅れなのかもしれない。ジェンダーレスの世の中で男のなんていうとダメなのかもしれない。
でも、Hさんの姿を見た時そんなに悪いことでもない気がした。
そうやって自分を鼓舞して律して生きてこられたのであろうと思った。

私も意地や根性がわかる昭和の女。
弱音をはくこともあるし、助けてほしいと思うこともあるし、守ってほしいという願望もある。
けれど、弱音をはいても、助けてほしいと思っても、守ってほしくても、最後は自分でやるしかない。
やるっきゃない!そんなセリフが流行った時代を知っている時代遅れの女です。

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