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ヤギさん郵便No.82「無題」


大嫌いだった人が亡くなった。
嫌いになる前は、信頼しようとしたことがあった。
裏切られた。
十年以上も会うことはなかった。
会っていなくても、この世の何か目には見えない灯りのようなものがあって、見えないのにその灯りを私の見えない何かが感じていて苦しくなることがあった。

この世からその人の灯りが消えたとき、私の見えない灯りを感じていた苦しみは消えた。

涙が出た。
人がこの世からいなくなった。
どんな人であっても悲しい。
大嫌いだったけれど憎んでいたけれど涙が出た。

誰もがいいことだけで生きていくことはないけれど、その人も悪いことばかりではなかったはずである。
周りにたくさん迷惑かけた人だったけれど、この人にも生まれた意味があったはずである。わかることのないことだけど、この人はこの人の人生を生きぬいたのであろう。

私はその人を静かにその人を見送った。

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