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【試論「人工知能概念はいつから存在したといえそうか?」3パス目】進化が加速度的に飛躍した「機械学習と意味分布論の時代」

このシリーズで採用した歴史観は以下。

  • 数秘術師や魔術師の時代(イタリア・ルネサンス期~近世)

  • 大数学者や大物理学者の時代(大航海時代~1848年革命の頃)

  • 統計学者と母集団推定の時代(産業革命時代~現代)

  • 機械学習と意味分布論の時代(第二次世界大戦期~現在)

その掉尾を飾る「機械学習と意味分布論の時代」についてですが、以前の投稿で「コンピューターゲームの進化も大きく寄与した」と触れています。

時は21世紀。鉄道網と汽船航路によって世界中の物流網が一つに結ばれた結果として史上初の国際恐慌が勃発して「1859年認識革命」の引き金となった様に、世界中のデータ・トラフィック網がインターネットによって一つに結ばれた結果「ビッグデータ革命」が勃発したという次第。

同時進行でゲーム・グラフィック画質進化の落し子としての「並列処理の化物」GPU(Graphics Processing Unit)進化があり、かかる特定演算力の飛躍的向上を背景に「情報量が2^10000=10^30のオーダーを超えて初めて本領を発揮する機械学習アルゴリズム」大規模言語システム(LLM=Large Language Models)が登場してきた訳です。

「分布意味論時代の歩き方1パス目」

それは今日ではどんな感じになっているのでしょうか? それを紹介するのに都合の良い好例がネットに転がってました。
ゲームプログラマのための数学の歩き方 -ラプラシアン編

ゲームプログラマのための数学の歩き方 -ラプラシアン編

私の様な数学素人は一目見他だけで足がすくむ有様。これを目にした私が抱いた最初の感想はまさに以下だったのです。

「葬送のフリーレン」第2巻
「葬送のフリーレン」第2巻

「葬送のフリーレン(2020年~)」における「ゾルトラーク(人を殺す魔法)から一般攻撃魔法へ」の流れの譬え再び。

編集前の風景

「大数学者や大物理学者の時代」に「天体運動や自然現象の観測によって神の節理に至る道」として始まった数理究明が、今や「画像を写真クォリティで操作するのに欠かせない技術」として広く浸透するに至った訳です。

「葬送のフリーレン」13巻
「葬送のフリーレン」13巻

その過程で浮かび上がってきたのが、このプレゼン資料でも幾度も繰り返し強調されている様な「ロードマップ再構築の重要性」だったのです。

  • 数理概念なるもの、コンピューター・プログラミングの世界におけるライブラリー階層の様に相互依存関係が存在し「あらかじめ特定の知識を相応量習得しておかないと次に進めない」の連続。しかも知識なるもの、高度になればなるほど「行間が広く」なり「行間を読む力」を求められる様になっていく。

  • かかる相互依存関係、割と発見順序と関係ないというか、数学史自体が「伝統的偏見を克服していく過程そのもの」なので「(学校で教えられてる様な)それなりに歴史に沿った数学教育」には「(既に滅んだ筈の)伝統的偏見を改めて植え付け直し再生産する」側面すらあったりする。

  • とはいえ、現時点では誰も「最も無駄なく最先端の数理に到達する為の知識獲得順序を定めたロードマップ」の完成に漕ぎ着けておらず、それぞれの分野がそれぞれの分野なりに試行錯誤を繰り返している時代。

その一方では、ゲームプログラミングの世界では古くからいちいち計算ライブラリーを呼び出すコストを削減する為、予め計算結果を作表しておいて必要に応じてそれを参照するテクニックが用いられてきました。まさしく「数秘術師や魔術師の時代」を終わらせた「科学諸表革命」時代の工夫の伝承…

「数秘術師や魔術師の時代」に発生した最大のパラダイムシフトは虚数や自然対数・指数概念の発見そのものというより、莫大な量の計算をあらかじめ済ませて作表し出版する様になった「科学諸表革命」である。

その意味合いにおいて「機械学習と意味分布論の時代」に発生した最大のパラダイムシフトは「一通りの作業を人間の逐次介入なしにこなすコンピューターが普及し、国際規模でネットワーク化され、そこを流れるデータそのものを観測対象とする様になった」事といえるかもしれない。

上掲「試論「人工知能概念はいつから存在したといえそうか?」1パス目」

考えてみれば、何たるダイナミックな変遷でしょう。まずはジョン・ネイピア(John Napier,1550年~1617年)やヘンリー・ブリッグス(Henry Briggs, 1561年~1630年)がその生涯を「事前計算」に費やして常用対数表を完成させて「物理学者や天文学者の寿命を何倍にも伸ばした」と絶賛され、さらにかかる作表作業を(人力介入による誤差発生を防ぐべく)全自動化せんとしてチャールズ・バベッジ(Charles Babbage,1791年~1871年)が設計した階差機関(Difference Engine)の末裔が「全自動化」の結果、今や作表だけでなく参照して役立てる時代となったのです。そしてその裏側では「処理単位」の「一人の天才が一生費やしても終わらない仕事量(手分けしても誤差混入による効率低下が避けられない)」から「CPU/GPUのクロック数」への劇的短縮化が進行した訳です。

こうして「数理の発見史(伝統的偏見の克服史)」「最も効率的な知識獲得の為のロードマップ(ただし利用現場によって必要とされる知識のニーズは若干異なる)」に加え「諸現場における実際の数理の利用のされ方の歴史」が相互に絡んでくるのが数学史のややこしいところ。その事が確認された時点で、とりあえず以下続報…

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