感覚の違い(偏り)って?
2,864文字です。個人差はありますが、約5分〜7分程度でお読みいただけると思います。
おはようございます。よこはま発達相談室の佐々木です。2022年も残りわずかですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。年々noteの更新頻度が落ちており・・・とはいえ、noteのメンバーシップは毎週更新しているので、トータルで考えると今までで最も更新しているのですが、どなたでもお読みいただける記事は不十分な更新頻度でした。
また少しずつ更新していきますので、お付き合い頂けますと幸いです。これまでは、その時々で思いついたことを書いてきたのですが、基本がもっとも大事だと思っていますので、基本的なことをもう少し系統的に書いていきたいと思っています。今回は、ASDの方の感覚の偏りがテーマです。
そもそも自閉症スペクトラムとは?
自閉症スペクトラム(Autism Spectrum Disorders: 以下ASD)というスペクトラム概念は、イギリスの児童精神科医ウイング先生(Wing, L.)と臨床心理学者のグールド先生(Gould, J.)が疫学調査の結果を踏まえて提唱した概念です。ウイング先生たちの定義によると、ASDとは、社会性、社会的コミュニケーション、社会的イマジネーションの三領域に質的障害が発達期から存在すること(三つ組の障害)で定義されています。また、感覚の偏り(違い)が見られる場合も少なくありません。なお、三つ組について、過去の記事でもまとめています。
感覚の違いって?
感覚刺激への反応に偏りがあることが多く、聴覚、視覚、味覚、臭覚、触覚、痛覚、体内感覚などの感覚領域で鈍感さや敏感さが生じます(あるいはいずれもが混在する場合もあります)。そのため、生活面で感じる負担や疲労の要因となりやすく、生活上の制限となることもあったり(例えば、特定の路線の臭いが苦痛のため使用できない)するため、生活の質(QOL)やwell-beingを考えた時には、決して小さくない影響を与えます。
具体的には、以下のような特徴が生じることがあります(これが全てということではなく、一例です)。
【聴覚】:ある音には敏感に反応するが、別の音には鈍感であるなど、音源の種類によっても反応が異なることが多いです。工事現場や花火の音、車の走る音に対し苦痛を感じ耳をふさぐ子どもが大声で話しかけられても全く気がつかないということもあります。
【視覚】:手をかざしたり、横目をしてみたり、特定の視覚刺激を恐れるなど、視覚的な刺激に対する独特の感じ方があります。ミニカーを走らせて楽しむよりも、タイヤの回る部分に注目して見ることに熱中し、横目で物を見る感覚刺激を求めるなどの行動がみられることが多々あります。隙間からものを見ることを好む人もいます。
【味覚】:味、温度、固い食べ物、舌触りなどに過敏であったり、逆に鈍感だったりします。
【嗅覚】:香水、消毒の臭い、体臭など特定の臭いを極端に嫌がったり、逆に人や物の臭いを頻繁に嗅ごうとすることもあります。
【触覚】:人から触られることを嫌がったり、軽く触られただけでも叩かれたように感じ、怒り出す人もいます。特定の感覚刺激を好む場合もあり、自分で頭を叩くなどの自己刺激行動を起こすこともあります。
【温冷感覚】:暑さ寒さに鈍感で低温火傷になったり、少し暑いとクーラーをつけることに固執することがあります。
また、味覚、口腔内の触覚、嗅覚の偏りがあり偏食につながったり(その他、偏食には視覚の偏りや社会的イマジネーションの問題が関与する場合もあります)。このテーマはご質問をいただくことも多いのですが、我々がどのように考えているのか音声でも解説しています。
支援の方針は?
ここまで説明してきたような感覚の違い(特異性)については、ストレスや不安が高まったときにより強く出ることもあります。わがままと受け取られがちですが、感覚情報処理の偏りとみなして対処する必要があります。そうした視点で対応をしていくことで、今の安心の分量が増えると、感覚の敏感さも緩まってくることは非常によく経験します。そのため、これらの特徴はその方のコンディションのバロメーターの一つにもなり得ることもあります(例えば、聴覚過敏が非常に目立つ場合には、ストレスや不安、不全感、疲労などが高まっていると考えた上で対応を考えていく等)。
こうした感覚面でお困りの点があれば、
辛さが軽減されるような策を講じる(例えば、聴覚過敏に対してイヤーマフやノイズキャンセリングイヤホンを使用するなど)と同時に、それらが目立つ背景にある不安等は何かを考え、その方の特性に基づく具体的な支援をしていくことが極めて重要です。
より詳しくは音声でも解説をしています。
リフレッシュツールにもなる
感覚の違いと聞くと困難なことにフォーカスされがちです。ですが、好みの感覚はリフレッシュツールとして活用することができます。それぞれの時間は短くても、好みの感覚刺激で過ごすことで、リフレッシュになるという方もおられます。「普段は読書が趣味だけれども、疲れて読めない。そういう時にはお気に入りの香りを嗅いだり、ぼーっと眺められるものの方がリラックスできる」と教えてくださる方もいます。
「感覚玩具」と入力して検索していただけると、さまざまなものが出てきますので、その方にとって、リフレッシュになる感覚刺激を見つけるのも支援の一つです。
まとめ
今回は感覚の違い(偏り)の特徴と支援の方向性について書いてみました。簡単にまとめると、以下の通りです。
ASDの方では、感覚面での特徴を併せ持つことも多い
聴覚、視覚、味覚、臭覚、触覚、痛覚、体内感覚などの感覚領域で鈍感さや敏感さが生じる(あるいはいずれもが混在する)
生活面で感じる負担や疲労の要因となりやすく、生活上の制限となることもあったり(例えば、特定の路線の臭いが苦痛のため使用できない)するため、生活の質(QOL)やwell-beingを考えた時には、決して小さくない影響を与える
これらは、ストレスや不安が高まったときにより強く出る
わがままではなく、感覚情報処理の偏りとみなして対処する必要がある
コンディションのバロメーターにもなる
その方の特性に基づく具体的な支援をしていくことが極めて重要
リフレッシュツールの一つにもなる
それでは本日も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
よこはま発達相談室
佐々木康栄
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