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一般的な親切や正論が、その方にとっての親切とは限らない

(6,031文字/個人差はありますが、約10分~15分程で読めると思います)
こんにちは。先日は、オンラインゼミのグループに入ってくださっている保護者の皆さんとオンライン保護者会を開催しました。たくさんの方にご参加いただき、有意義な時間を過ごさせていただきました。ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました!また開催しますので、どうぞ宜しくお願い致します!

検査はなんのため?

本日、明日は「発達障害臨床におけるWISC-Ⅴ/WAIS-Ⅳを活用したアセスメント―支援に生きる診断・評価のために」というテーマで、主に医師や心理師などの専門家の先生方を対象にした研修を行なっています。
   
知能検査には多くの誤解があります。例えば、「言語理解」という領域があるのですが、その数値が検査上で高く、数字上は一見した困難がないよう見えるからといって、生活場面においても困難がないとは限りません。数値そのものよりも、行動観察などの質的な特徴も含めて考えていくこと、そして何より「どう支援に活かすか」が重要です。そのためには、検査者側がトレーニングをしていく必要があり、ぼく自身も臨床を始めてから、検査の勉強やトレーニングを受けなかった時はないと思います。
    
一見すると衝動的に見える行動があった場合、「ADHD」と判断されることが少なくありません。でも、本当に衝動性の問題なのかどうかを、我々支援者は考えていく必要があります。実際には、衝動性の問題ではなくて、社会性の問題が関係していることもありますし、いずれも関係してくることもあります。
   
どうして、こうしたことを考えていく必要があるのかというと、原因によって対応が異なるためです。例えば、その場で期待されている振る舞いやルールがわからない、そもその今の時間が子どもにとってわからない、関心が乏しいなどがあるために、衝動的に見える行動をとっているとすれば、衝動性をどうするかではなくて、その場で期待されているルールを明確に伝える、子どもにとっての課題設定を見直すというようなサポートが必要になってきます。
       
今回のセミナーでは、知能検査を切り口にそうした話をしていますが、これは日常場面のアセスメントでも同様の視点です。
    
さて、前置きが長くなりました。今回も皆さんからご質問を頂いておりますので、それについてお返事をしていきたいと思います。      

保護者の方へのエンパワメントの必要性と難しさ

保護者支援を行なっているが、保護者にも様々な背景の方が居て、その人は合わせた支援が必要だと思っている。特に心の弱った保護者へのエンパワメントをどうすべきか、支援者が望む事と、保護者自身が求めるものとの差が大きい場合、佐々木先生ならどう対処されますか?
      

「今すること」「今しなくていいこと」の合意点を

ご質問ありがとうございました。
   
「特に心の弱った保護者へのエンパワメントをどうすべきか、支援者が望む事と、保護者自身が求めるものとの差が大きい場合」とありました。これは、「お子さんの現状に対して求めることが高く、その結果日々の子育てや対応がうまくいかずに親御さんが疲れてきてしまっている状況」ということなのかなと推測してお返事をしたいと思います。

土足で踏み込まない

まず、ぼく自身が意識していることは、「土足で踏み込まない」ということです。それぞれのご家庭の事情や人生観もありますし、また多くの葛藤を持って当たり前だろうと思っているので、そこに対して、支援者としての正論だけを振り翳し「まだまだ障害受容できていない。障害受容できると楽になるし、それがスタートですよ」みたいなことを仰る方々にお会いすることがあります。

障害受容という言葉への違和感

これは色々な場所で話しているのですが、「障害受容」という言葉は、ぼくが嫌いな言葉の一つです。
      
発達障害の特性があってもなくても、子どもたちは日々成長します。以前は想像もしなかったような喜び、楽しさ、希望などを教えてくれることがあります。一方で、また新しい課題が出てきて、「どう対応したらいいだろうか」と頭を悩ませることもあります。
  
今は言葉を話さないけれども、いつか話してくれるのではないか?話してほしいという気持ちを持ち続けるのは悪いことでしょうか?そうした気持ちを持つことは不可避かもしれませんし、そうした気持ちを持つことと、障害を受容していないということは、また違った話のようにぼくは感じます。
    
そうした親御さんたちの気持ちを蔑ろにすることは違うと思いますし、正論だけ伝えれば良いわけではないというのが、「土足で踏み込まない」ということです。

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