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伸ばすか伸ばさぬか?

赤井川村のスキー場に行ったときのこと。このスキー場,いつも12〜1月に行ってたせいか,雪質は最高だけどとても寒く,天気もだいたい曇りか雪だったのですが,この日はとても晴れて気持ちよかったのは初めてです。

さて,そこでリフトに乗っていたときに見つけたのがこちら。

赤枠の中は「セフティーバー」ですが,青枠の中は「セーフティバー」となっています。この違いはなんでしょう。

「ティー」のような語末の長音はかつてJIS(日本工業規格)の中で3音以上の外来語の末尾にある長音は付けないとされていたためか,工学系を中心に書かれないことが多いです。ちなみに作家の森博嗣氏はエッセイで「実際に短い」と書いていて,作品でもそう書いていたような記憶が。

実は音声実験で語末の長音は短く発話され,また知覚でも長短の区別が中和しがちという実験結果もあります。

Kubozono, Haruo (2002) Temporal neutralization in Japanese. LabPhon 7.

次に「セフ」と「セーフ」ですが,これはよく分かりません。会社の名前になる程度には浸透しています(今は変わってしまいましたが)。

時代を見ると,1869(明2)年の『和訳英辞書』という辞書には「セーフ」と読み方を記しています(safetyもセーフチーですがちょっと読みづらいのでこちらをあげます)。

しかし,1887(明20)年の『明治通俗和英節用集』という和英辞典(これも節用集と呼んでたんですね)にセフチイが出てきます。

数の大小を見るとやはり「セーフ」(赤)の方が基本的には優勢ですが,数回「セフ」が多くなっています。

ちなみに途中の長音の省略をここまで許す例が他にちょっと思い浮かびません。探すとハーフタイムを「ハフタイム」と書いているものが見つかったりはしますが,実際の浸透具合まではちょっと自信ありません。これが見つかるともうちょっと分かることも増えそうです。

また,(現代語で)「セーフティー」「セーフティ」「セフティー」はあるけれど,「セフティ」はかなり少ないです。これは全体の長さは最低4モーラ分保ちたいのかなという気もします。

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