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引きこもりだけどテート美術館展にいってきたら、ときめいた

 🌟勝手に福岡フェス期間中ですが、今日はお休みしてテート美術館展についてのお話です。


 私はイギリスの大画家、ターナーのファンだ。なので、作品の実物を見ることができるテート美術館展にはずっと行ってみたかった。

英国を代表する国立美術館テートから「光」をテーマにした名品約120点が一堂に!
ターナー、コンスタブル、草間彌生、リヒター、ジェームズ・タレル、オラファー・エリアソン……。
時代や地域、ジャンルを超えた「光の作品」の競演にご期待ください。

テート美術館展公式HP

 行ってみたいということは以前、音声配信でも話したが、9月に入って暑さも和らいだので、行ってくることができた。

 テート美術館展とは、イギリスのテート美術館が所蔵する絵画などをメインとした特別展だ。

テート美術館って?

イギリス、ロンドンにあるテートは4つの国立の美術館ネットワークです。

この展覧会ではテート美術館とされていますが、訪れたことがある人ならわかる通り、イギリスではTATE(テート)と呼称されていますし、正式名称もTATEです。

ロンドンに2つ(テート・ブリテン、テート・モダン)、地方に2つ(テート・リバプール、テートセント・アイビス)の館があり各々独自の企画展も開催しています。

テートは、砂糖精製で財を成したサー・ヘンリー・テートが、1889年に自身のコレクションをナショナル・ギャラリーに寄贈しようとしたことが始まりです。

建築とアートを巡る https://www.artarchi-japan.art/2023/07/works-form-the-tate-collection.html

 東京では六本木の国立新美術館で10/2まで開催されていたし、大阪では10月26日から2024年1月14日まで、大阪中之島美術館で開催される。

 関東在住の私は、えっちらおっちら、たまに歩くと腰が痛いのうとお祖母ちゃんみたいなことを言いながら乃木坂駅まで行って、直結している国立新美術館に向かう。

乃木坂駅にテート美術館展のポスター

 ……の、だが。

 感想を言おう。

 人、ヤバすぎ。

 チケット売り場で30人くらい並んでいたので、私はあ然とするしかなかった。入場待ちではなく、チケット購入に列ができているのだ。仕方なくオンラインでチケットを購入して入ったら、入場列に50人くらい並んでいた。物販のレジも長蛇の列で階段まで10メートル以上列を作っていた。

 最近都内の美術展に行ってないので忘れていたが、日本人は大の特別展好きなのだ。これだけテレビやネットで広告を打ったらそれはもう人が押し寄せるだろう。

 会期終了間近なのも良くなかった。

 いや、だって8月は暑かった。
 9月もまともになってきたのは後半だ。外に出れない。9月後半でも倒れそうに暑い。

 特別展なら混むのは普通では? と思う方はいるだろう。

 そう。数年前東京国立博物館で行われた鳥獣戯画展では……長蛇の列というレベルではなかった。

 ディズニーランドの人気アトラクション並だった。

 広い前庭にポールとチェーンで区切られた待機列が形成され、老若男女がひしめいている。あれは地獄じゃ! 現代の地獄じゃ……。

 でもなんせ私は今リモートワークのせいで引きこもっている。特別展がこんなに混むということをスッカリ忘れ、帰宅ラッシュに巻き込まれたくないなあと電車の心配だけをしていた。

 間違いだった。なんでこんな混んでるんだ。

 まあでも最悪、展示室の外が混んでいるのはいい。10分ほどで入ることができたことだし。

 でも中も人が常に滞留していて、ゆっくり作品の鑑賞をする、どころではなかった。壁に展示された絵の前に、人がむらがっている。写真撮影が可能であるということもあって、人気の絵は立ち止まる人も多く、快適な状態ではない。

 でも、どういうわけか、目当てにしていたターナーの絵の前にくると、たとえ人の頭で視界を遮られても足が止まり、意識が絵に吸い込まれていくのが分かった。

 ターナーの絵はこの世に存在するもののうち、特別愛すべき何かと出会った時のみずみずしい感覚をもたらした。ああ、なんてうつくしいんだろう。こんなにどうしようもない世界の中で、奇跡のようにうつくしい。

 この絵がもたらした光が、私の胸を照らすようだった。

 私は、この絵が好き。

※人が入っちゃって撮れなかったのでポストカード

 この「湖に沈む夕日」はターナーの後期の作品だ。彼が父を亡くしたあと、おそらく失意の中で作った作品ではないかと私は思うのだが、ターナーが生涯を通して表現した光と色の効果はより強調されている。彼の後期の作品はおおむねこのように、物や建物の細部ではなく、大気や光の感覚に焦点をあてたものになっている。

 多分写真ではただの黄色っぽい絵としか思えないと思うので、ぜひ実物を見ていただきたい。

 一方、ジョゼフ・ライトの「トスカーナの海岸の灯台と月光」は、静かな夜を照らす光をはっきりと表現している。

ジョゼフ・ライトの「トスカーナの海岸の灯台と月光」

 海岸線の風景と灯台の輝きは、自然の力と人の営みの調和を表現してるみたいだった。月光が波を照らす様子は、安らぎと奥深さを感じさせた。

 特に、水面に映った光が目を引く。この絵の中で一番明暗差がついて目を引き付けるのは、実はこの部分だ。

 見る人はそこに目を引かれた後、上の灯台、月のあたりに視線が上がっていくだろう。あるいは逆になるパターンもあるのだろうが、いずれにせよ、あたかも灯台の光を追いかけるように、自然と一筋の光を目が追うことになるのだ。この仕掛けが面白く、私は飽きずに見てしまった。

 すべての展示について書いていると長大な文章になってしまうので、この2点について述べて、この2点以外も、素晴らしい絵ばかりだったという感想と共に締めくくろうと思う。

 混雑には閉口したが、さすがテート美術館である。光をテーマにした絵や展示の数々は、超一流で見ごたえもたっぷりだった。

オリファー・エリアソンの「星屑の素粒子」

 それにしても、ああ、ずっと死ぬまでにターナーの絵を生で見たいと思っていた。それが叶ってよかった。

20メートルぐらい並んで買ったポストカードたち
※オフィーリアは展示がなかったが、オフィーリアにうれしくなって買ってしまった

 以前、柴咲先生の個展に行った時も幸せな気持ちになったが、やはり絵や美術品などの芸術は人を幸せにする不思議な力があるのだ。

参考:テート美術館展図録


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