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空に放った言葉達

春を迎える準備の霧雨の夕方
お気に入りの紫色の傘を広げたいからさす。

週末の仕事帰りの夕方はいつも人通りが少ない
道行く人は皆ご機嫌な顔をしているから自分ではお気に入りの時間。

お気に入りの紫傘をクルクル回して歩いていると
前から笑顔の親子連れが歩いて来た。
自転車の補助席に幼子を乗せ、母であろう若い女性が美しい母性の笑みで見つめる。

横に寄り添い歩く父であろう若い男性が2人に雨カッパを優しくかける。
自分の分は無いよっと両手の脇を締め、手の平を空に向けて戯ける。

次に幼子のお気に入りであろう黄色の小さな傘を
頭の上で広げて少し踊って見せた。
その姿を若い母と幼子が声を出して笑う。

通り過ぎた時に少し時間が止まる

空見上げ自らの微笑み一つ花開き

花を咲かせ視線を移すと
今度はお揃いのジャージ姿の若き姫2人がゆらゆらと心が踊るままに自転車を漕いで来た。
霧雨で濡れた前髪を何度も触りながら楽しそうに話す。愛らしい姿に希望溢れる未来を感じた。

幸福感を沢山いただき微笑みながら遠回りする事を決定した。

思えばいつも言いたい言葉を空に放って生きて来た。あれの為、これの為と。
判断は間違ってはいなかったと思う。
ただ、放った言葉達に労う花をあげる事が出来なかった。
そんな独り言に放った言葉達は伝えてくれる気がする。
いつの日か放った言葉達を集めて大きな花にしようよ。他には無い花になるさ。

自分に都合の良い独り言をして
お気に入りの紫傘をくるくる回しながら歩く

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