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20230322/日記

芝居通いが終わった。

あれだけ早く始まらないかと思っていた「梅棒 16th showdown『曇天ガエシ』」の東京公演千穐楽を迎えてしまった。
結局11ステージ見たわけだが(いつもそれぐらい見ているわけだが)
諸事情により私の推しはあまり出番数が少なかったのだが、役柄として後世に影響を与える存在である(と私は解釈している)ので身近な出番でもどうしても何度も見てしまいたくなるのであった。
何より劇場が大きくなったことで演出の幅が広がりスペクタクルになったこと、美しい照明と音響を味わえ、ストレスフリーに観劇出来る客席設計……。
中野ZERO大ホールからの新国立劇場中劇場という場所を超えた東京公演は演出面でも圧倒的されてまた会場の良さもありただただ作品の世界に没頭することができた最高の空間だった。

物語性としても演出面でも今まで以上に『渦に引き込まれる』感覚に取り込まれていた。すべての結末を知っている状態でもなお何が起こるかわからないほどに二転三転に錯綜する、『ジパングリ』という名の世界の出来事。

大阪・愛知の地方公演は見に行けないので今日で私の曇天ガエシは終わってしまったが、どうか近くで見に行ける機会がある人がいたらぜひ足を運んでほしい。

私はまだあの世界からしばらく帰られそうもありません。
5日間も休んでみてたから……明日は仕事できるかしら……。

そして本を買う

友人と観劇後に新宿高野でパフェを食べて感想を話し合い、閉店時間で追い出されるまで粘っていたが偶然閉店前の紀伊国屋書店に立ち寄ることができた。
買いたい、というか気になっていた本はすでに決まっていたが新しくなったフロアの明るさに心躍りしばらく2階を無駄にうろついてしまうなどしていた。
そこで

を手にして4階に向かう。
思った以上にファッションの(というか「デザイナー」の本って)少ないんだな……と本棚の前で悩みつつ気になっていた本を見る

とはいえ2階を放浪しすぎて閉店まで時間は少ない。
慌ててレジに向かって購入を済ませたところで地下鉄駅に向かい家路へと向かう。
その中で1点だけカバーをかけてもらった「服を作る」をさっそく読み、帰宅してから晩御飯を挟んでそこから一気に読み切った。

命のやりとり、女という存在。

あきやさんのこの記事を読んで自分もLIMIFeuとY'sの服を買って着るようになってからいつか読まなければいけないと思っていた本。

ド頭で射抜かれたのはこの言葉。

作家の坂口安吾の言葉を借りれば、「それを表現しないと、死ぬしかない」というぐらい追い詰められているのか、という自分への問いかけが作家にないと、本当にいい表現はできない。

山本耀司 宮智泉(聞き手)
服を作る モードを超えて 増補新版
9Pより

演劇はタイムパフォーマンスとコストパフォーマンスの悪いエンターテイメントである。沢山の人が心血を注いで作って命を削りぬいた作品を浴びて帰ってきた帰り道にこの言葉は響いた。
「これを届けなければ死ねない」というキャストスタッフ全員の決意を受け取るために私は初日から何度も劇場に通っていた。「これを見れなければ死ねない」と。

何より、自分が趣味の範囲内でこうやって文章を書いたりだとかをしている中でこの言葉にうっすらとした共感を覚えている。
これを書かないうちには死ねない、という極端なこともかつてあった。
「今日これを書かないと寝れない」「これを書くまではご飯食べられない」ぐらいのうっすらとしたものもあるが、生命のほんのすこしを代償にして何か生み出さないといけない瞬間は、確かにある。

すべてのクリエイションは命のやり取りだと、強く思う。
文章も音楽も演劇もファッションも何もかもすべて。

他にも読んでいるうちに特徴的だったのが「女」という存在に関する視線だった。
自分を生み出した母、コレクションを身に着けるモデル、パターンを生み出す肉体、購買層に存在する女性。
時に優しく時に急に突き放し、畏怖を覚え、美しさを感じる。
一つの性別の中にいくつも役割と目線を重ねていることに、何度も繰り返される「ファムファタール」という言葉に集約されていく。

女性として山本耀司の服を着ている私はひどくどきどきとしながら行を目で追っていた。
命をやりとりし、女性への目線が投影された服を着るとひどく安堵するのは、なぜだろうか。
常に「反骨心」がテーマだとしてもなぜか優しさがそこにある。
もしかしたらあの包まれるような感覚は胎内回帰願望にも近いようなものなのかもしれないと思う。個人的に。

黒はすべての始まりの色。自分の命に還っていく服。
私にとっての山本耀司の服はそういうものなのかもしれないという気づきに出会えた一冊だった。

今の私が服を買うのは、その憤りを鎮火していく〝自分への復讐劇〟なのです。復讐というと悪い意味を思い浮かべるかもしれませんが、あくまで優雅で真剣な儀式のようなものです。

音楽が好きな人が、大好きなミュージシャンの新譜を配信初日に、正座をしながら聴くように
映画が好きな人が、大好きな監督の作品を公開初日に映画館で瞬きもせず見るように
甘いものが好きな人が、老舗和菓子屋さんの季節のお茶菓子を買って、良いお茶を丁寧にいれて、わくわくと食べるように

私も喜びと共に真摯にファッションに向き合っています。「優雅な生活が最高の復讐である」という言葉があるように、優雅に自分へ復讐していきたいと思っています☕️

自問自答ファッション通信
【ワイズ】「一着の服を選ぶってことは1つの生活を選ぶってこと」Y’sの服を買ったお話【購入レポ】より

あきやさんの優雅な自分への復讐という言葉も、素敵ですよね。
改めて、本当に出会えてよかったと思える服と本でした。

ちなみに、作中の100の質問(山本耀司が古のオタクみたいなことさせられてると驚いた)は時にキュート。
後半で布一枚で新人の訓練のためにスカートを作るさまを表す言語力たるや自分にピンが付きたてられたようでぞくぞくとする感覚に囚われます。おすすめです。

ちなみに……。

紀伊国屋書店さん4階にはあきやさんのご著書も棚で飾られておりました!

重版出来おめでとうございます💜

あと帰って食べた焼き餃子(皮から配偶者手作り)が美味しかったです。
あの人、どこまで粉料理を極めるつもりなんだろう……(最近毎日パンを焼いてます)

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