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震源地別(東海道南方沖)地震まとめ

【はじめに】
この記事では、「東海道南方沖」を震源とする地震について纏めました。

0.2021年9月14日の地震について

この記事を書いた2021年9月14日の朝、「東海道南方沖」を震源とするM6クラスの地震が発生し、最大震度3を「東京」を始め、関東地方などで観測し、ネット上などで話題となりました。

「深発地震」については、上記の記事(↑)もご覧ください。

この地震は、震源が深い「深発地震」と呼ばれるもので、深発地震に特有の震度分布となりました。深さ数百kmの地震では、むしろ物理的に自然な分布なのですが、今回もまた『異常震域』という大正時代の言葉が、ネットニュースを賑わせてしまっています。

詳しくは、上の記事(↑)をご覧頂きたいのですが、要するに、

かつて「深さ数百km」で地震が起きると考えられていなかった頃に、普段の(浅い)地震のような「同心円状」でなく、震源から遠く離れた所が強く揺れるという「異常」な「震域」を持つ地震がある。

ということで、「異常震域」と命名されたのですが、これもおよそ大正時代の話しで、昭和の始め頃(戦前)には、「深い所で起きる地震」ではこういったことが起こることは知られるようになりました。本来は、昭和時代で、このネーミングをはっきりと改めておくべきだったと個人的には思います。

※ですが、未だにこの「異常震域」というネーミングは、インパクトがあるからか使われ続けています。むしろ、今回の地震から学べる教訓は、(↓)

《 今回の地震から学べる教訓 》
「異常震域」は、深い所で地震が起きることを知らなかった大正時代とかのネーミング。メカニズムが判明している現代では「異常」じゃない。
むしろ、深い所で起きる地震は、漏れなく「異常震域」となる。
「異常」と付くからと言って、過度に不安がる必要は一切ない!

1.概要

まずは、漠然としていてピンと来ないネーミングの震源地「東海道南方沖」とは何処でしょうか。気象庁の地図で確認をしてみましょう。

画像1

ちょっと細かくて見づらいですが、画像のほぼ中央の領域ですね。静岡県の真南、八丈島の西の海域のようです。実はこの「三重県南東沖」との境目がちょうど『南海トラフ』のプレート境界で、「東海道南方沖」とはプレート境界の(日本列島から見た)外側を指すのです。

こうして見ると、周囲と比べてかなり狭い領域だということが分かります。

2.浅い地震(M5.5以上)

気象庁の「震度データベース」で、M5.5以上で深さ100km未満の地震を検索すると、以下の5例がヒットします。ここ約半世紀で4例、平成年間で3例というスパンです。(うち1990年には1時間で2度発生)

画像2

年号  深さ  規模 最大 東 横
1921 08km M5.6 1 1 1
1971 31km M5.5 3 2 1 三島3
1990 60km M6.6 3 1 1 伊豆諸島・近畿7地点で3
1990 42km M6.0 3 - 1 八丈島3、1時間後に発生
2004 51km M5.7 3 - 1 利島、静岡県内で3

浅い地震の中で最も大きかったのが、1990年の事例で、上の画像では大きな黄緑色で表示されているものです。東北から中国地方まで有感でした。

画像3

また、この地震では伊豆諸島と、東京湾から四国までの沿岸に津波注意報が発表され、八重根で10cmの津波を観測しています。

3.深い地震(M6以上)

続いて、2021年9月にも起きた「深い地震」を見ていきましょう。震度データベースで、「M6以上、100km以深」を検索すると、2009年までで10例がヒットします。

画像4

パッと見では、2グループに分かれている様にも見えなくはないのですが、震度分布に大きな違いがないので、ひとまず今回は区別せずに行きます。

年号  深さ  規模 最大 東 横 宇
1923 394km M6.0 1 1 1 -
1925 297km M6.4 4 - 2 3 宮城・金山4
1936 397km M6.0 2 2 1 2
1968 366km M6.4 3 3 2 2 茨城・柿岡3
1975 442km M6.6 3 3 3 3
1978 440km M7.2 4 3 3 4 網走、高知、久米島1
1980 400km M6.5 4 3 3 4 釧路、豊岡、延岡1
1992 325km M6.2 3 3 3 3 
1993 391km M6.9 4 4 4 3 日光4、釧路2
2009 333km M6.8 4 4 3 4
2021 450km M6.2 3 3 2 2

全体的な傾向としては、深さ300~400km台で発生すると、東日本を中心に有感となり、宇都宮や東京・横浜などで中~弱程度の揺れが観測されます。

規模として最も大きかったのが、1978年3月7日に起きた「Mj7.2」の地震です。下の図に示した通り、東日本のみならず、北海道から沖縄に至るまで有感となった地点がありました。丁度、プレート境界を伝ったのでしょう。

画像5

また、1993年10月12日の地震もM7の大地震に近い規模で、死者1名、負傷者4名という(深発地震としては珍しく)人的被害が出ています。

ただ、こうして頻度を振り返ってみると、ここ100年で10回以上もM6以上の地震が起きていますし、震度分布も深い地震としてはありふれたものです。

確かに2009年8月9日19時56分に「東海道南方沖」でM6.9の地震が起きた約33時間後の2009年8月11日5時7分に「駿河湾」でMj6.5(Mw6.3)、最大震度6弱の地震は発生したことは事実ですが、そういった顕著な地震が起きた例ばかりではありません。過度に恐れるのは、却って危険かと思います。


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