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メンマが 里山を守る?!

メンマの語源って知ってますか?
麺(メン)の上にのせる麻竹(チク)の加工食品だから、「メン+マ」だそうです。(安直!)
ちなみに「シナチク」は同じものですが、こちらも語源は、支那(シナ)そばにのせる竹(=チク)ということで「シナ+チク」(これまた安直!)
ただ、「支那+竹」の「支那」という言葉がいろいろと差し障りがあるという事で、最近はあまり使われなくなったようです。
(「支那」は IMEの漢字変換でも出てきません)

今日は、メンマが里山を守る!というお話です。

国産のメンマを食べてみた

本来、メンマは中国で採れる「麻竹」という竹を、茹でた後、発酵させてつくるもので、日本で流通しているメンマのほとんどが中国からの輸入品ですが、日本の「孟宗竹」で作ったメンマがあると聞いたので、食べてみました。

国産メンマ

パッケージの原材料には「筍(国産)」としか書いてありませんが、製造元のHPには、
国産の孟宗筍をじっくり時間をかけて戻し、化学調味料を使用せず、粗糖、米発酵調味料、ごま油などで風味豊かに、歯ごたえよく仕上げた、味付メンマです。」と書いてありました。

味は、フツーに美味しかったです。(ちょっと味付けが甘いけど)
値段は500円前後とちょい高めですが、国産という安心の価値も含まれていると考えれば…(桃屋の瓶入メンマはほぼ同量で300円前後)

この国産メンマが、「竹害」から山林や里山を守る救世主として期待されています。

竹林は年々増えている

日本の森林面積 約2,500万haの内、約16万ha(全森林の0.6%)が竹林ですが、毎年じわじわと増えており、
1986年(S61)~2012年(H24)の26年で
約1.4万ha(山手線内側の面積の2倍以上!)の竹林が拡大しています。

竹林の面積推移
H30林野庁「竹の利活用推進に向けて」より

竹林が年々少しずつ増えているのは、筍の増産のためでも、竹製のザルやカゴを作るためでもなく、外国人観光客が大好きな竹林庭園を造るからでもありません。
竹林は「勝手に増えている」のです!

1950年~60年 日本の竹が一斉に消えた!?

元々 竹は貴重な生活資源として、筍採取や、ザルなどの生活道具の材料として、家の壁の芯材や農水産業などの資材として重宝され、農家では近くの裏山などに竹を植えて利用していました。

ところが、高度成長期にさしかかる1950年~60年頃、竹が日本中から姿を消しました。
マダケ(真竹)の一斉開花」です。

マダケとハチクは120年周期で開花し、開花後は一斉に枯死します。
マダケとハチクは開花しても種ができないため、地下茎から生えたタケノコが成長するまで、竹林は再生しません。

農水省HPより

日本だけでなく世界各地で、マダケが一斉に開花、枯死したことにより、
竹不足が起こり、ちょうど普及はじめたプラスチックへの切り替えが一気に進んだそうです。
そして、筍も安価な輸入品が増加して、国産の竹の需要が激減しました。


里山の困った問題:「竹害」の実情

今、日本の里山で問題になっているのが、「竹害」です。

需要が激減したことにより、手間をかけてまで管理するのが見合わなくなり、放置される竹林が増えてきました。

同じイネ科の植物でも、コメやムギは栽培を止めれば、それで終わりですが、
竹や笹は放ったらかしにしたら、生育が止まるわけではなく、逆にどんどん増殖していきます。

使われない竹林は、管理不足で周囲の森林や里山へ侵食し、さらに整備をする担い手も高齢化し、荒れた竹林は、「竹害」とも呼ばれるほど邪魔者扱いされるようになってしまいました。

竹害①: 生物多様性の低下

竹は、繁殖力が非常に強く、地下茎を周囲へ伸ばし、地下茎からたけのこを発生させて勢力範囲を広げますが、
そのスピードは、1年間で2~3m程度、最大では7~8mともいわれています。
そして、管理されていない竹林は、竹の密度が高くなり、
また、高さが20mにもなるため、太陽の光が届かず、林内が薄暗くなり、他の植物が生育できなくなります。
一方、たけのこは地下の貯蔵養分を使って伸長するので、暗い林床でも成長し、結果、「竹しかない林」となり、
餌となるものも少ないので、昆虫や動物などの多様性も少なくなります。

竹害②:山の保水力の低下

自然林や手入れされた人工林では、
木が地中深く根を張るとともに、拡げた枝葉や、堆積した落ち葉、林床に生えた低木や草木などが、雨水を一旦溜め込むことで、
土砂流出を防いだり、洪水を防止する機能があります。

一方、竹林では、
林床に他の植生が少ないうえに、竹は雨水を受け止める枝葉も少なく、根も50cmくらいの表層にしか地下茎を張らないため、
地盤が弱くなり、保水力も劣ります。

竹害③:獣害の温床

農家の裏山などの放置竹林は、畑などが近いのに人が入らないため、
イノシシやシカなどにとっては格好の棲み処となり、
畑が荒らされるなどの獣害の温床となります。

「限界集落」増で、竹害は これからますます拡大する!

限界集落とは「住民のうち、65歳以上が半分以上を占める集落」のことですが、その数が急激に増えています。
2020年発表 では 20,372か所と、10年前に比べて倍増(2010年=10,091か所)しており、
しかも、その内の2744か所は、近いうち集落が消滅するそうです。

ただでさえ、年々拡大している竹林ですが、
里山の手入れを担う農山村の高齢化~限界集落化~集落消滅が拍車をかけ、今まで以上のスピードで勢力を広げることが予想されます。

竹害に立ち向かう「国産メンマ」!

この放棄竹林による竹害拡大にストップをかけるために立ち上がった人たちがいます!
拡大する竹林を厄介者から、役立つ資源に変える「国産メンマ」。
その名も、「純国産メンマプロジェクト」です!!

国産メンマは、日本には自生しない麻竹ではなく、竹害の主役である孟宗竹や真竹を使って作られます。

福岡県糸島市で端を発した研究の結果、日本に古くからある「孟宗竹」や「真竹」であっても適切な処理を施すことで、メンマにできることが分かりました。適切に処理された純国産メンマは、輸入のそれとは異なる、独特の歯応えとなり、クセのない特長を生かし、メンマに留まらない食材としての可能性が感じられます。

純国産メンマプロジェクト公式HPより

また、国産メンマは、筍ではなく、
最早「竹の子」とは呼べない 2m近く伸びた幼竹でもメンマにできるため、収穫期間が長く、作業も省力化でき、竹林整備とセットでできるというメリットもあります。

この国産メンマによる竹林整備の動きは、各地に広がり、
「純国産メンマプロジェクト」には、74団体が参加(令和5年3月2日現在)しているそうです。

加入団体数(個人含む) 74団体(令和5年3月2日現在)
純国産メンマプロジェクト公式HPより


サステナブルな素材として見直される「竹」

杉が木材として使用できるサイズになるまでには 約50年かかり、
その間は間伐材の利用収入は多少あるものの、
50年間、ほとんど収入にはなりません。

一方、竹は20年で一人前となり、
しかも、毎年、筍による収入が見込め、
本来であれば、木材以上にサステナブルな素材としてのポテンシャルがあります。
最近では、土壌改良剤としての竹チップや、消臭効果や抗菌効果が期待できる竹炭や、紙や衣料の原材料としての活用も徐々に広がってきました。

今はまだ、日本各地に広がる竹林に対して、使われる量はとても限定的ですが、毎年採取できる幼竹を使った「国産メンマ」が、採算ベースに乗れば、竹林整備の際に伐採する竹の継続供給の可能性が生まれ、資源としての活用も進むのでは…と期待しています。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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