〇駄作?傑作?平成シリーズ異色作ゴジラVSスペースゴジラ

1994年12月10日公開
平成ゴジラ・シリーズ6作目

どちらかと言えば、駄作として語られる事が多いこの作品。
前作、ゴジラVSメカゴジラでハリウッド版にバトン・タッチして完結するはずだったのを、そちらの製作が遅れた為に急遽シリーズ続行が決まって製作されたと背景があります。
その為か、敵怪獣スペースゴジラの誕生の経緯がどこか安易で、物語的必然性をあまり感じない。また、今回初めてゴジラ映画を担当された柏原寛司さんの脚本は、どこか軽いトレンディ・ドラマ風であまり重厚感がありません。音楽が伊福部昭先生で無くなった事も、それまでの作品とは雰囲気が違う違和感の原因ともなっています。

大傑作だと特撮映画ファンに大評判を取った‘95年のガメラ大怪獣空中決戦と公開時期が近かった事も、相対的にこの作品の評価があまり高くない一因となりました。

しかしながら今改めて観なおしてみると、独特の魅力が溢れているのも事実。

スタッフの特撮技術の蓄積がいよいよ結実して来たのか、冒頭バース島に現れるゴジラの巨大感が本当に素晴らしい。身長100メートルの生き物が日光の下にいたらこんな風に見えるんだろうなと言うリアリティに満ちています。VSビオランテから同じ型で作られてきたゴジラの造形も、遂に完成形になった様に感じます。リトル・ゴジラとの大きさの差を強調するために、肩回りを盛り上げてより巨大に見えるように作られたシルエットが抜群にカッコ良い。頭部の可動も、VSモスラから導入された上下の動きに左右の動きが加わり、グネグネと気持ちよく動いてゴジラの感情をよく表現できている様に思います。

撮影スケジュールの余裕がなくなり、クライマックスの戦いが短くなってしまったVSビオランテの反省から一番大事な最後の戦いを先に撮影する様になった川北紘一監督率いる特撮班。今作はその恩恵が最大限に生かされていると思います。クライマックスの福岡の戦いに最大の見所が来るように、脚本の構成が全振りされている。人類の技術力の粋を集めたロボット怪獣モゲラとゴジラが共闘してようやく互角の戦いが出来るスペースゴジラ。人類とゴジラが協力しながらエネルギーの供給元の福岡タワーを壊し、地面から生えた結晶体群を破壊し、エネルギーを取り込む肩の結晶体を攻撃して粉砕する。強大な敵の戦力を少しずつ削って行く理詰めの展開はシリーズの新機軸と言えます。その間に描かれるモゲラ・パイロットの男達の戦いのドラマ。違和感のあったトレンディ・ドラマ的キャラクター描写がこの段に至って鮮やかに生きて来るのです。

傑作の完結編VSメカゴジラの後に急遽製作された感のある今作ですが、上に記した成熟した川北組特撮によるクライマックス、熱い男達との協力による強大な敵とのバトルと、プログラム・ピクチャーとしてシリーズを再出発させる要素が盛り込まれているのが分かります。改めて観なおして、出来れば同じ路線で後2、3本観てみたかったなと言う気持ちになりました。ファンの妄想になりますが、チャンピオン祭り時代の敵怪獣のリメイクも観てみたかった。メカゴジラ、モゲラに続く3体目のロボット兵器(ガルーダを入れれば4体目ですが)として開発されたガイガン。それが暴走してしまい地球の敵になり、ゴジラと戦う。人類は自らの過ちに落とし前を付けるためにゴジラに協力して戦う、と言う展開でゴジラVSガイガンを作ったら熱い映画になっただろうな、と考えたりしてしまいます。平成ゴジラの造形はやっぱり抜群にカッコいいですし。

しかし、劇中の世界に怪獣がいるのが当たり前の前提になればなるほど、怪獣映画は作りづらくなる。未知の生物が人類の前に初めて出現する瞬間がやはり怪獣映画で一番面白い部分ですからね。ゆえに次作ゴジラVSデストロイアにてゴジラの死を描くと言うアイディアでもって本当の完結編とする判断になったのも、宣なるかなと感じます。

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