紛らわしかったかもしれませんが、現代ものではなく時代劇、武侠物語です。
トップ画像に敢えてこの画像を使わせてもらったのは、これがドラマの雰囲気をよく表していると思ったから。
本作は、赤と黒が基調のダークな色調にメリハリの利いた斬新なデザインと、スタイリッシュな映像美がとても素敵で好きでした。ポスタービジュアルや画面構成、アクションシーンなど、とにかくオシャレ！

配信開始時に観始めたのですが途中数か月放置してしまい、最近再開。約8か月かけてようやく完走しました。
中国語字幕で視聴したのですが、武侠ものにありがちな成語や詩文のような台詞が多くて、難易度高かったです。でもすごく面白かったので、よろしければお付き合いくださいませ。
ネタバレありです。未視聴の方はご注意くださいね！

京城（都）の二大勢力

主な舞台となるのは 金风细雨楼。敵対勢力は 六分半堂。
この二大勢力の争いを軸に、主人公たちの義侠心や友情、恋、諸々が絡んだ成長物語が描かれていく。

主人公は侠客の 王小石、ニックネームは小石頭（曾舜晞）、同じく侠客 白愁飛（刘宇宁）、小石頭の恋人 温柔（杨超越）。
金风细雨楼 楼主の 苏梦枕（陈楚河）も重要な役処。その恋人 雷純（孟子义）は 六分半堂 総堂主の娘だ。
金风细雨楼のテーマカラーは赤なので、いつも赤い衣装を着ているのだが、陈楚河に似合っていて強さと迫力がよく表現されていた。

小石頭は素直で明るい青年。見た目に反して腕は立つ。初っ端から将来有望なところを感じさせる人。
白愁飛、ニックネームは大白菜、または大白。衣装は白が基調なので見た目通りだ（笑）
少し斜に構えたところがあるけど、純粋でもある。
温柔は名前のごとく、温かくて可愛らしくて思ったままに行動するが、芯の強さも持ち合わせている。小石頭とお似合いのカップルだ。

六分半堂には個性溢れる人物が多い。
まず、総堂主の娘である 雷純。幼いころに金风细雨楼の 苏梦枕と出会って、お互い惹かれ合っている。いわゆる許されぬ恋、ロミオとジュリエットだ。
彼女の兄のような存在、大堂主の 狄飞惊、狄大哥と呼ばれている。いつもうつむきがちなのが特徴だが、静かな熱い義侠心があって、後半わたしはこの人がとても好きになった。
大白菜や総堂主を色香で惑わす雷媚も、ここ六分半堂の三堂主。パープルの現代風衣装が目を引いて素敵だった。

個性的なところでは他に金风细雨楼の朱小腰も。この人は善と悪を揺れ動き、役柄も女郎から侠客まで幅広く、そしてなんといっても打たれ強い！
てっきり最早これまでかと思いきや、しぶとくサバイバルしていく。流石数々の印象的な役をこなしている 曾一萱が上手く演じ切っていた。

苏梦枕と大白、小石頭は義兄弟の契りを結び、それぞれ大哥、二哥、三弟の関係となる。

恋物語

このドラマ、恋愛劇としてもなかなかの見応えだった。
メインカップル以外は訳アリばかりの関係性。苏梦枕と雷純のロミジュリカップルには、大白も参入して三角関係となる。大白の温柔への純な想いとその結末は痛々しく哀しく、兄弟の関係にも大きく影響していく。

小石頭と温柔に大きな障害がない分、他のカップルは思いっきり多難だ。
その煽りを一番食ってしまうのが 雷純で、彼女の衣装はその時々を象徴する色へと移り変わっていく。
最初は無垢な白、傷つき黒化した後は文字通り黒、数奇な運命によって金风细雨楼楼主の妻となり赤、そして元の六分半堂の身分で紺へと、くるくると変化する色が憐れを誘う。
大きな瞳から零れる涙は胸をえぐられるような気持ちにさせられたし、紺の衣装に身を包み、やり場のない哀しみを抱えた雷純が赤の衣装の苏梦枕を想いながら、鉢を泳いでいる全く同じ紺色と赤色の金魚を見つめるシーンは、とても印象深かった。

悪役がいい

武侠物語だから悪役が豊富！ 皆さん色々な「悪」ぶりを発揮していて面白かった。これでもかと憎たらしい朝廷側の面々ｗ
傅宗書 はじめその部下二人など。上に摺り寄って善人をいたぶり尽くすが、もちろん最後は報いを受ける。
孙祖君 演じる 方応看も、キャラの立ったいい役だった。孙祖君は『三国機密』の 王服役が印象深くて好きな俳優さんなのだが、今回の黒ぶりもなかなかだった。温柔に言い寄って困らせるところなど、イヤらしくも魅力的。胸をはだけるシーンが目立ったが、胸自慢なのかな？（笑）

そして、これはネタバレではあるが、究極の黒は大白であろうと思う。兄弟のまさかの闇堕ち！これにはかなりビックリした。
小石頭の生存を信じられなかったが故だが、牢に入った経緯もあり、同情の余地がないでもない。ここまでは。
だがその後の彼の行動は、ここまでやるかな、という位に鬼畜の如く残虐だ。
刘宇宁の当たり役である 皓都、『長歌行』の配信前に撮影を完了している本作。人気が出ている今後はここまでの悪役はキャスティングされないかもしれないと思うくらいの悪役だったｗ
まさに悪魔に魂を売り渡し、義侠心はおろか人間の心も捨て去る大白。最後は過ちを悟って自分で決着をつけるのだが、刘宇宁好きのわたしでもこれは許せない！と思ったものだ。
刘宇宁は、やや屈折気味で斜めな人物が上手いと思うが、その意味では適役だったのではないか。ただ、少し笑顔が可愛すぎたかも（笑）

好きが変化するドラマ

苏梦枕役の 陈楚河は回を重ねる毎に好きになった。吐血しながらも義に一直線なところ、兄弟や雷純への温かい想い。カッコよかったなー！！
その彼の忠実な部下 无邪もいいキャラクター、朱小腰もだんだん好感度が増した女性だった。

しかし何といっても小石頭の成長ぶりには目を見張るものがあった。序盤は武功はあるものの弟分らしい甘さもあったが、都を出て経験を積んで頼りがいのある大人物になる。曾舜晞 がお顔の可愛さを活かしつつ、武芸もめっぽう強い彼を好演していた。アクションシーンも説得力があって、とてもよかったと思う。

原作あり

なるほど、原作小説が人気らしい。わかる気がする。
武侠物語、成長物語、恋物語、人物造形、どの角度から観ても秀逸だった。
最後、全ての伏線が回収されているのにも驚いた。

民から慕われ、請われてリーダーとなる小石頭、当然次の楼主になると思いきや、推薦人物を言い残して江湖へ戻る。
その際に長老たちがつぶやく言葉…

キレのある描写にアクションシーン、斬新なデザイン、スケールの大きさ、美しい映像、どれも素晴らしく、いいドラマだった！

そうそう！忘れてはいけない音楽。インパクトのあるOPも、挿入歌のバラードも、主人公二人が歌うEDも、全部よかった。
そして何といっても（中国語だけに）難解だったタイトル「说英雄谁是英雄」の謎が最後に解けたことが、嬉しかったな。

本当はもっとストーリーについて書きたかったのですが、一つ一つのエピソードが内容の濃い魅力的な物語なので、文字数的に書き切れませんでした。
来月（2023/02）『江湖英雄伝』のタイトルで日本上陸だそうなので、沢山の人に観てほしいドラマです。

ひとつ蛇足ですが、上陸時のポスターが現地のものと違うのがちょっとだけ残念。あのよさを分かる人、日本にも多いと思うのですが…！

また素敵な武侠ドラマに出会いたいものです。
お読みいただきありがとうございました！