見出し画像

18きっぷで特急!?

岐阜県大垣で一夜を明かし、青春18きっぷは3回目。その初っ端は「え、そんなん乗れんの!?」と思われそうな列車にも乗る。

雨の降りしきる朝の岐阜県大垣。ここから乗るのは名古屋行き「ホームライナー大垣4号」。名古屋から北陸へ向かう特急「しらさぎ」用の車両を回送する過程で営業する座席指定列車。乗車整理券かグリーン券を買わないといけないが、特急とは別物。「青春18きっぷ」が使える「普通列車」に分類されていて、「特急の皮を被った快速」と言ったところか。

今回指定したグリーン席の券面にもしっかり「普通列車」と書かれている。

1000円もせずに枕やテーブル、フットレストがもれなくついてくるし、備え付けのブランケットも使用可能。京阪の「プレミアムカー」を越えるかもしれないような安い高待遇。なんせ普段は5000円はくだらないもんだから。

ちなみに乗ってる車両はJR西日本所属。ステッカー類やネット予約サービス「e5489イーごよやく」の広告類はユーザーには見慣れている感じのもの。近鉄や京都地下鉄などで他社の車両が他社の路線のみで折り返す電車はよく見かけるが、エリア外の広告がとてつもない違和感を醸し出すし、他所者なんだなって思う瞬間でもある。

大垣を発車すると、ラッシュピークであるため先行する各駅停車とはちょいギリの距離でゆっくり走流ことが多いが、基本的に駅間が長いため時々特急らしく飛ばすこともある。

尾張一宮を発車するとすぐ、線路を渡って、貨物専用である線路に入った。稲沢駅では休んでいる機関車の真横を「邪魔すんで〜」と言わんばかりに堂々と素早く駆け抜けていく。機関車越しに流線型の稲沢駅の建物と橋も遠巻きで見えるというこの列車でしか見られない光景が。さらに清洲駅では先を走ってた各駅停車も追い抜かすという凄技も見せた。「湘南新宿ライン」や埼玉、都心からお台場へ向かう「りんかい線」関空特急「はるか」など貨物専用の間借りをしてショートカットする旅客列車は多いものの、不思議なもんだ。「マリオカート」でコースが分岐したり秘密のショートカットを通り抜けるような感覚を覚える。

40分で終点名古屋に到着。「ホームライナー」は特急「しらさぎ3号」としてそのまま金沢へと折り返していく。通勤客プラス“物好きなファン”が降りるや否や、旅する人やビジネスマンが乗っていく。春休みシーズンなのか若い女性のグループも見られた。

かつては大阪から京都と滋賀、奈良、和歌山、宝塚や三田さんだ、丹波篠山へ向かう「ライナー」が多数あったし、首都圏でも東海道線や中央線、千葉方面などで見られた。しかし、それらは特急にランクアップされたり、快速に取って代わられたりして、風前の灯。今は東海エリアのみで「大垣」「瑞浪みずなみ」「沼津」「静岡」「浜松」を残すのみ。回送列車という経緯や快速扱いということで通常の特急より安い価格で着席が保証されるサービスはビジネスパーソンの懐には助かったであろう。ただ、少子化やコロナで客足が減ると客単価をあげて収入を確保するのが会社にとって死活問題だったりする。それ故に特急化することも増えたのだろう。この電車もいつまで続くかは分からないが、「密」を避けられる良い空間だからまだまだいけるかもしれない。ビジネスとは無縁の僕ではあるが、そんな空間での貴重で至福の40分を味わえた。

その後は謎めいたローカル線に乗ることになるが、それはまた…

ストリートミュージシャンの投げ銭のような感覚でお気軽にどうぞ。