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アデル、ブルーは熱い色

2014年4月吉日。私は新宿バルト9で『アデル、ブルーは熱い色』というフランス映画を観た。監督は『アブデラティフ・ケシシュ』。主演は『アデル・エグザルコプロス』、『レア・セドゥ』。カンヌ国際映画祭で監督と俳優が同時に、パルムドールを受賞している。アデルは受賞時19歳だったらしい。また、7分間の衝撃ラブシーン!!と、日本公開前から話題だった。

軽く物語を紹介しよう。高校生のアデル(アデル)は交差点ですれ違ったブルーの髪の女性エマ(レア・セドゥ)と視線を交わした瞬間、心を奪われる。偶然にもバーで再開を果たし二人は恋に落ちていくという物語である。

初めてスクリーンで観た時は衝撃的だった。濡れ場もそうだけど。映画を観ているというより、自分が映画の中に入り込んでしまった様な錯覚を起こしてしまう映画だった。俳優の芝居は、芝居というよりは自然で、本当に怒り狂い、泣き叫び動揺し、混乱しているんじゃないかと思ってしまう。私は本当に心配をし、心臓がずっと『ドクドク』音が鳴っていた。隣に座っている人に聞こえてしまっているんじゃないかって、チラッと隣を確認してしまったし、映画を見終わった後の私は放心状態になっていた。

ただ、主演の二人のインタビューを見ていて思う事がある。

レア・セドゥはこう語っている。

『この映画は公開すべきじゃないと思う。あまりに汚れてしまったわ。パルムドール受賞は、ほんの一瞬の幸せなひと時で、その後は屈辱を感じ、名誉を傷つけられた。自分が否定されたような気もした。呪われた人生を生きているようなものよ』

アデル・エグザルコプロスはこう語っている。

『私は、若かったし役者としての経験が浅かった。撮影が始まってから、自分が監督の求めるレベルまで役にのめり込む心の準備ができていなかった事に気づいた。ただ、すべてを捧げるといっても、大抵の監督は役者にあそこまで求めないだろうし、もっと役者を尊重すると思う』

説明をすると、7分くらいの濡れ場のシーンに10日もかけ100テイクも同じような濡れ場をやらされた。それがわいせつ的だったと2人は指摘している。また、全撮影期間は2ヶ月だったはずが、5ヶ月以上もかかった。また、アデルが芝居中に怪我をして血が出てしまったのに撮影を止めようとしなかった。2人は、監督と2度と仕事をしたくないと語っていると言う。

主演の2人は明らかに撮影方法に不満を抱いている。どう考えても、7分の濡れ場を10日間で100テイクって時点で屈辱的だ。私は実際にその濡れ場を観ている。映画の予告等でも『史上最高のラブシーンに世界が大喝采』と推していたので、『R18だから何ヵ所かに分けて濡れ場があるのかな』ぐらいに思っていたんだけど。実際初めてスクリーンで観た時『え。また?なが。えここまでするの?』と正直思ってしまったのを覚えている。視聴者側がそう感じるのだ。俳優はもっと感じただろう。

2人にとって『アデル、ブルーは熱い色』は飛躍作品になったと思う。予告等には『アデル、ブルーは熱い色のレア・セドゥ』、『アデル、ブルーは熱い色のアデル・エグザルコプロス』と紹介されている。私の様にこの作品で2人を好きになった人や改めて2人の俳優魂の凄さを知らされたという人も多いと思う。パルムドールを受賞する事が出来た。素晴らしい事だし簡単に取れる賞ではない。だけど、監督の私欲があからさまに出てしまった撮影方法で、俳優がトラウマになってしまうのは違う。それに、彼女達も『そんな撮影の仕方をされたのか。可哀想に』なんて思われたくないと思う。私だったら思われたくない。

彼女達の人権を考えるとこの先、配信や劇場でアンコール上映等を、するのはどうなんだろうと思ってしまう。『知った上で観ると大変だったんだな。辛かったんだな』って思ってしまう。けれど私は、やっぱりこの映画で彼女達の芝居の凄さを知った。彼女達の繊細な動きや感性に凄く惹かれた。きっとこの作品を観ていなかったら、未だに好きになっていなかったかもしれない。そんなの勿体ない。2人を知れた事に関しては、この作品に感謝してる。そう言った意味では『アデル、ブルーは熱い色』が好きだし、人生の忘れられない映画の中の一本である。

最後に、アデル・エグザルコプロスがInstagramに『アデル、ブルーは熱い色』の時のオフショットを投稿する時がある。少し思うんだ。彼女達にしか分からない事だけど。辛く嫌な思いをしたけど、レア・セドゥと共演・出会えた事は、アデルにとって幸せな事だったんじゃないかって。少しでも幸せな部分が2人にあったなら私は嬉しいなと思う。そして、彼女達がこの先仕事をする上で、2度とこの様な事が起きない事を願うばかりである。また、少しでも長く映画俳優をして欲しいと、ファンとして心から思う。

ありがとうございました!

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