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SF「太陽がほしい」#7

SF「太陽がほしい」#7

「おい、止まれ。ここで一度休憩をとる」

 僕たちは一時間ほど歩いてきた。自分たちのシェルターから少しずつ離れていっているので仲間たちは安心だろう。彼らは火をおこし、暖を取り始めた。確かにたった一時間とはいえ、足元が灰で埋もれているので、上手く歩くことが出来ない。そのため余計に体力を消耗する。かつての舗装された石畳の有難さを思い知らされる。なんたって世界は捻転してしまったんだろうか。

「おい、お前ウラジオストクにいたって言ってたよな」

「ああ」

「お前、あの日はどんな風にして過ごしてたんだ?」

「・・・」

「ま、話したくないなら良いけどよ。あんなことがあったんだからな」

 確かにひどいことがあったのは間違いない。しかし僕たちにとって幸せな日常だった最後の時間だ。しかしあまり鮮明に覚えていない。もしかしたらあの悲惨さを思い出したくなくて記憶に蓋をしていたのかもしれない。僕は詳細に思い出してみることにした。

 あの日、まだ僕は小さかった。両親と手を繋いで市場を歩いていたような気がする。行き交う人々で賑わい、屋台は活気に溢れていた。どこからか肉の焼ける良い匂いがした。すると父はレストランで食事でもするかということになった。父も僕も肉料理が大好物だったので、店選びにはさほど時間はかからなかった。父は慣れたようにメニューを見ながら次々と注文していった。運ばれてきた料理を母が取り分けてくれた。僕は食事を頬張りながら、外の行きかう人たちを見るともなく、眺めていた。


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