緒方 悠十

(おがたゆうと)小説を書いていきます。

緒方 悠十

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最近の記事

分かった気でいることを改めて勉強することの大切さを知りました。やはり未熟者でした。相応の成長ができるように頑張ります。

    • ※小説「職場の嫌な人間の殺し方」#10

      小説「職場の嫌な人間の殺し方」#10 「電話はしたぞ、配達はお前が行け」 「かしこまりました、優子様」  近藤は車から出るとトランクの方へ回り込んだ。トランクを開けるとスーツのジャケットを脱ぐと黒い作業着を上から羽織った。 「そんなんで配達員って信じるのか?」 「近年ではネットショッピングが当たり前になっている時代です。人員不足でもありますから、配達員の服装など気にしている人など稀有でしょう」  それもそうだ。最近では黒いシャツ一枚で配達に来る人が沢山いる。配達員

      • SF「太陽がほしい」#10

        SF「太陽がほしい」#10  男たちは熱狂していた。何かを成し遂げる時の前夜の熱狂。自分たちが何を成すべきかを理解したときの安心感と偉大な功績に向かっていくという高揚感が焚火の周りには充満していた。 「ボス!難民キャンプに向かいましょうよ!」 「そうですよ!こいつの両親がいるかもしれませんぜ!」  するとボスは大声を上げた。 「バカ野郎!だからお前たちは浅はかだって言ってるんだ!」  男たちはキョトンとしている。 「難民キャンプまでどれほどの距離があるのか分かっ

        • ※小説「職場の嫌な人間の殺し方」#9

          小説「職場の嫌な人間の殺し方」#9  私は近藤のスマホを利用することにした。どうやら仕掛けがしてあるらしく、こども園の電話番号で発信することが可能らしい。本当にコイツなんでもやりやがる。私は電話をするときは少し声が高くなる。母がそうしていたのを子供のころに見ていたから、電話とはそういうものだと考えていた。しかし現代ではスマホでタダで電話が出来るようになった。そのせいなのか気怠そうに話す人が増えた。海外の人なんかはイヤホンで四六時中電話している。そんなに話すことなんてないだろ

        分かった気でいることを改めて勉強することの大切さを知りました。やはり未熟者でした。相応の成長ができるように頑張ります。

          SF「太陽がほしい」#9

          SF「太陽がほしい」#9  僕が話し終えると、焚火の周りの男たちは口をあんぐりと開けながら、こちらを見つめていた。まるで悲劇からの突破口があり、その逆転劇が僕の口から語られることを期待しているようだ。 「なあボス、受け入れてもらえないとは分かってますけどよお、コイツの両親とやらを見つけ出すってのはどうです?」 「我々にそんな義理などない、問答無用だ」 「でもボス、奴はクリスティアンサンから生き残ったんですぜ。両親と離れ離れにさせるなんて紳士が廃るってもんですよ」 「

          SF「太陽がほしい」#9

          ※小説「職場の嫌な人間の殺し方」#8

          小説「職場の嫌な人間の殺し方」#8 「直接渡しに行くって言ったって、なんて言って渡しに行くんだよ」 「郵便配達員に扮したところで読まない可能性がありますよね」 「どうするかどうかは近藤が考える事だろ。どうすんだ?」 「電話を使いましょう」 「は?」 「対象者に電話をします。職場の人間になりすまし、渡さなきゃいけない書類を忘れていたと伝えるのです」 「でも声でバレるだろ」 「対象者はこのこども園に就職してから二か月しか経っていません。そこを逆手に取るのです。」

          ※小説「職場の嫌な人間の殺し方」#8

          SF「太陽がほしい」#8

          SF「太陽がほしい」#8  外の人たちは軽快に歩を進めていた。右に行ったり、左に行ったり。僕らのような家族もいれば、カップルだろうか、体を寄せ合う男女は少し歩きづらそうだ。そんな群衆の間を縫うように子供たちが駆け抜けていく。子供とは走らずにはいられない生き物なのかもしれない。まるで乱数のように行き交う人々がゆっくりと歩みを止める。人々は右上を見ている。振り向いて見ている人もいる。突然右側から全力疾走する人が現れる。何かを目撃し、走り出す人と思考が停止したのか、呆然と立ち尽く

          SF「太陽がほしい」#8

          ※小説「職場の嫌な人間の殺し方」#7

          小説「職場の嫌な人間の殺し方」#7  こども園を後にした私は対象者の自宅へと向かった。現在は独居となっているが、交際関係はないのだろうか。 「対象者に交際相手はいないのか?」 「残念なことですが、あまり好意的な印象を持っている方々が周りにいらっしゃらないようなのです」 「そうか」  考えてみればそうだ。自分の子供を虐待し、パワハラで部下を自殺に追いやるほどの野蛮なやつだ。相当の暴言を普段から吐いているはずだ。そんなやつ誰だってお断りだろう。近づきたくもないはずだ。

          ※小説「職場の嫌な人間の殺し方」#7

          SF「太陽がほしい」#7

          SF「太陽がほしい」#7 「おい、止まれ。ここで一度休憩をとる」  僕たちは一時間ほど歩いてきた。自分たちのシェルターから少しずつ離れていっているので仲間たちは安心だろう。彼らは火をおこし、暖を取り始めた。確かにたった一時間とはいえ、足元が灰で埋もれているので、上手く歩くことが出来ない。そのため余計に体力を消耗する。かつての舗装された石畳の有難さを思い知らされる。なんたって世界は捻転してしまったんだろうか。 「おい、お前ウラジオストクにいたって言ってたよな」 「ああ」

          SF「太陽がほしい」#7

          ※小説「職場の嫌な人間の殺し方」#6

          小説「職場の嫌な人間の殺し方」#6  私は子供を抱えてインターフォンを押した。中から先生らしき人が出てきて見学の旨を伝えると快く受け入れてくれた。近藤は私の父ということになった。旦那にしては歳が離れすぎているからだ。私は子供を抱えながら先生に園内を案内してもらった。私が案内されている間に、近藤が盗聴器を取り付ける手筈になっている。 「ここはホールになります。朝と帰りの時に全体集会をします」  なるほど。天井がドーム型になっていて声がよく響きそうだ。 「あちらが教室にな

          ※小説「職場の嫌な人間の殺し方」#6

          SF「太陽がほしい」#6

          SF「太陽がほしい」#6  彼らはやはりライフルを持っていた。ライフルで僕の背中を小突きながら僕を連行していった。彼らの拠点までどれほどの時間がかかるのかは分からないが、今は彼らに従わないと自分の命を守れそうにない。荒廃した灰色の世界で僕たちはこんな醜い争いをしながら命を繋いでいかないといけないのか。  建物を離れる時に他の連中と合流した。彼らはどうやら二手に別れていたらしい。それもそうだ。大人数が一か所に固まって動いていては獲物を捕まえることは出来ない。それぞれ屈強で眼

          SF「太陽がほしい」#6

          ※小説「職場の嫌な人間の殺し方」#5

          小説「職場の嫌な人間の殺し方」#5 「こちらが女性の職場になります」 「うわあ、嫌な予感してたんだよな」  そこはこども園だ。まさか保育士だったとはな。 「何年くらい働いてんの?」 「まだ2か月ほどです」 「転職したばっかりってこと?」 「ええ、どうやら職場を転々としているようですね」 「いじめをやって居心地が悪くなったら、別の場所に移るって感じか」 「そのようですね」 「まさかこども園で虐待してないだろうな」 「それはこれから調査をしてみないことには分

          ※小説「職場の嫌な人間の殺し方」#5

          SF「太陽がほしい」#5

          SF「太陽がほしい」#5  地面にうつ伏せになったが、襟元を掴まれて、すぐに立たされた。目の前にいるのはいかにも元軍人といった風貌だ。自分の両脇にも屈強な男が立っている。僕の両腕をがっしりと掴み、僕が逃げないようにしている。どうやら僕は捕虜になったようだ。 「貴様何をコソコソしている!逃げる気か!」  右の男が僕に怒鳴った。逃げて当たり前だ。お前たちのような略奪者から逃げるのは当然だ。 「あそこで何をしていたんだ」  目の前の男が話しかけてきた。答えは慎重に選ばなけ

          SF「太陽がほしい」#5

          悠久の人類

           長い歴史を積み上げても、人間の悩みは普遍的である。それは「学んだ人」は死に、「まだ何も知らない人」が生まれゆくからだろう。学ばなければ、いつまでも同じことで悩むだろう。

          ※小説「職場の嫌な人間の殺し方」#4

          小説「職場の嫌な人間の殺し方」#4 ファイル#12136 対象者:40代女性 経 歴:30代で結婚し二児の母となるが、児童虐待が原因となり離婚が成立。現在は独居している。現在の職場では不満が多いのか後輩をいじめ、そのうち二人は精神を病み、退職後に自死している。 「ひでえファイルだな」 「優子様、お力を貸しては頂けないでしょうか」 「こんな奴が社会で平然と人権を主張しているなんてどうかしてる」 「優子様、何卒」 「おい近藤、コイツの場所分かってんだろ?」 「は

          ※小説「職場の嫌な人間の殺し方」#4

          SF「太陽がほしい」#4

          SF「太陽がほしい」#4  積もった灰に足を取られるが、何とかして隠れる場所を探さなくてはいけない。しかし彼らが僕を見つけられなくて、諦めてくれるのは望み薄のようだ。なぜならあらゆる人々が物資不足だからだ。生きるためなら略奪も厭わない連中は多い。そうした連中から身を守る方法は接触を避けるか、接触しても勝てるほどの武力を行使するかの二択である。僕は残念ながら武装していない。こうなれば追っ手をまくしかない。僕は慎重に廊下を確認し、ドアのある部屋を探す。一つドアを見つけた。そのド

          SF「太陽がほしい」#4