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イラク戦争の加害と被害 米兵のPTSD

PTSD ( post-traumatic stress disorder 心的外傷後ストレス障害) という言葉をときどき聞くが、その実例がアメリカのドキュメンタリー番組で紹介されている。

本人は、元サーファー。ある日、思い立って米軍に入隊した。

親戚に軍人を多く出している家系の出身で、父親も元米軍勤務。兵士どうしの兄弟的絆  brotherhood にあこがれて入隊したという。



イラクに派遣され、仲間の米兵がイラク人に残虐行為をおこなったのを目撃して、ショックを受けた。他方で自分は脊椎を損傷し、一年後に帰国してからは、大量の鎮痛剤をアルコールで飲み下す毎日。

そんなある日、父親の家の部屋で、17歳の女性を素手で殴り殺した容疑で逮捕された。

元兵士の PTSDでは、感情の爆発と殺傷行為が同時に起こり、その瞬間は本人もコントロールができず、自分がなにをしたか、記憶もはっきりしないことがあるらしい。

米軍の場合、実戦に送り込まれた兵士の 2割 ほどが、こうしたPTSDになるという記事を読んだことがある。この番組の調査では、イラク帰りの米兵の4割が、帰国後暴力事件を起こしていたという。

被害者がでた以上、この青年が無罪だとはいいにくい。だが、この青年もまた、米軍と戦争による犠牲者だともいえる。

さらに、戦争の犠牲になった現地イラクの人々もいる。

軍隊と戦争は、何重もの犠牲者をつくりだす。犠牲の背後には加害者がいるが、その加害者もまた被害者だったりする。

この青年に同情した親戚が、ドキュメンタリーのなかでこう言っている。

"You can take the soldier out of the war, but you can't take the war out of the soldier."

この青年は、公判の日が近づくなか、アリゾナの母の家に滞在中、死亡した(おそらく自殺)。

26歳だった。


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