見出し画像

for a man か for manか 月面着陸のアームストロング氏の名言をめぐる冠詞騒動について

1969年、アポロ11号が月面に着陸。

最初に月面を歩いたニール・アームストロング氏(2012年死去)の名文句を覚えている人は多いだろう。

「一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な一歩だ」

この言葉、じつはアメリカでは長年の論争になっているという。

論争の焦点は、「アームストロング氏は文法の間違いを犯しているのではないか?」というもの。

http://edition.cnn.com/2013/06/04/tech/armstrong-quote/index.html?iref=allsearch

アームストロング氏の名文句は、録音では

"That's one small step for man, one giant leap for mankind."

と聞こえる。

しかし、 for man は、英語として奇妙である。

この場合、アームストロング氏は、人類 mankind と対比させて、「一人の人間にとって」と言いたかったはず。

ところが、for man ではその意味が表せない。当然、ここは for a man でなければならない。

はたして、アームストロング氏の英語が間違っているのか、それともマイクなど機械の欠陥によって a が聞こえないだけなのか。

歴史的な名言だけに、録音データが何度もチェックされてきた。

最近では、アームストロング氏のオハイオ風発音では、for a が frrrruh になりやすいので、やっぱりfor a と言っているのだ、という説が出ている。

ちなみにNASA は、「アームストロング氏はちゃんと for a man と言っている。聞こえにくいだけ」と一貫して主張しているそうだ。

冠詞の重要性は、マーク・ピーターセン氏のベストセラー『日本人の英語』(岩波新書、1988年)あたりから、日本でも認識されはじめたように思う。

アームストロング氏の名言をめぐる騒動をみても、われわれも冠詞をおろそかにしない心構えが必要ということになる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?