1-4-3 動態は時関を離脱できる(時脱)
英語の動態は、時関(過去・現在・未来)と融合し、時相(進行・受動・保持)をもつことで、概念としての深まりをみせる。
さらに動態は、文のなかで時関も時相も離脱して、原形という形ももちうる(時脱)。
形式としては原形になるというだけだが、概念の内容からみると、時脱には次の三種類がある。
① 無時関 時関は他の語が表しているため、時の概念との関係を考える必要がなく、原形のままで現れる。
動存(be, do)のあと Did you know that ?
判慮(助動詞)のあと I can't sleep tonight.
いわゆる「使役」の文で Let me see it.
propose, suggest など、想定を述べる動態のあとの that 節で He proposed that the meeting be postponed.
なお、一人称・二人称の主語の後でも、動態の現在形は原型になるが、それは現在という時関をゼロ記号(なにも表現しないことで表現する形式)で表しているもので、無時関とは別の概念である(同形異概念)。
② 空想 いわゆる「仮定法」。空想は、対象の態(なり)が、心内でも現実ではないことを話し手が自覚したうえでつくる観念世界で、「もし昔ああだったら、今こういう現実があったはずなのに...」という表現形式をつかう。そのため、空想の前提となる部分に動態や判慮(助動詞)の過去形(「昔ああだったら」)を用いて空想上の時点を表し、その後の動態は時関概念から解放されて時脱(原形)となる。
I wish I could marry her.
③ 命令 これも時関の概念を離脱した時脱の一種。文頭におくことで表す。
Go out, boy!
なお、動態は、to~ の形をとったり(いわゆるto 不定詞)、 ~ing と融合して名詞になったり(動名詞)して、さらに発展した概念を表すが、これらは別のカテゴリー(変成動態)で扱う。
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