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【コラム】 なぜ water は「数えられない」か 「物質名詞」は抽象的な物性の概念(特体)

「物質」というと、形をもつ「物」のことだと思いやすい。

だが、英文法でいう「物質」とは、「物」の「質」、つまり対象がもつ物性のことである。いわゆる「物質名詞」とは、対象の物性をとりあげ、それを体概念(名詞)にしたものである。

たとえば、waterが「物質名詞」だというのは、水に特有の物性(物理的性質)を体概念化(名詞化)した語、という意味である。

概念としての water は、物性につけた名前で、世にある実物の「水」ではないのである。

レストランなどで a water などということがあるが、これはコップに入っていたりして、<個>で数えられる特殊な状況だからで、water じたいは、あの独特の物性をとらえた、抽象的な概念である。

以前、アメリカ人に「どうして鉄は数えられないのか」と聞いたら、「どうやったら鉄が数えられるんだ?」と逆に質問されたことがある。

英語の iron とは、その物質の種類がもつ属性の全体、つまり物性のことだから、どこでもいつでも同じものである。それを「数える」というは、どういうことなのか?

彼が言っていたのは、そういう意味だと思う。

ただ、従来のように「物質名詞」と言うと、物そのもののことなのか、物性のことなのか、まぎらわしさが残る。

そこでトランス・グラマーでは、性を化(名詞化)した概念であるという意味で、「物体」と呼んでいる。

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