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書くことと話すことの相違

 今年から音声による情報発信を始めてみた。きっかけは言うまでもなく「Clubhouse」である。コロナ禍により自宅警備員が急増したタイミングでの日本上陸で、多くの人がこぞって音声によるコミュニケーションを楽しんでいたが、自宅警備の任務が解かれて野に放たられるや否や、閑散とした場となってしまった。夏草や兵どもが夢の跡。

 とは言え、音声によるコミュニケーションの可能性を改めて感じることが出来たのは収穫だった。音声の場合は文章では表現し辛い「抑揚」「律動」を伝えやすい。そして何より「ながら聴き」出来るのが良い。私たちは仕事や娯楽問わずスマートフォンやパソコンの画面と常に向き合っている。文字によるブログやSNSの場合は、仕事をしたりニュースサイトを読みながら「ながら読み」が出来ない。しかしながら、音声による情報発信の場合は「ながら聴き」が出来る。このアドバンテージは大きい。

 まずは「Podcast」で番組を始めてみた。一本30分くらいを目安に、食にまつわることを気ままに語る内容だ。話すことはいくらでもあるのだが、如何せん編集と配信に手間がかかる。編集などせず録って出しすればそこまで面倒ではないのだろうが、変なところに神経質で几帳面な性格が出てしまい、パソコンの編集ソフトでボリュームや音質を調整したり、音楽をフェードインさせたりと、週に一本制作してアップするのがなかなか大変だった。

 そこで話題の音声プラットフォーム「Voicy」にて、新たに番組を始めてみた。ここでパーソナリティになって配信するには審査が必要なのだが、幸いにも審査を通って番組を配信出来ることとなった。こちらはスマートフォンで全てが完結する優れもののアプリがあり、今までの苦労が何だったのかというくらいに簡単に番組が配信出来る。余計な作業に時間を取られることなく、ただ話すことに集中すれば良い。あまりにも簡単なので、今のところ毎日配信が出来ている。週に一本作るのが大変だったPodcastとはえらい違いだ。

 Voicyは簡単に録音配信出来ることが最大のメリットだ。だから、逆に細かな編集などは出来ず、録って出しに近い形で配信することになる。Podcastの時は「てにをは」がおかしければ録り直していたし、妙な間などは編集で詰めていた。しかしVoicyではほぼノーカットで話すことになる。そうなるとやはり言葉遣いや間合い、論理破綻がないかなどがついつい気になってしまう。こう見えて神経質で几帳面な性格なのだ。

 長いこと文章による情報発信をして来た身としては、正確に読みやすく理解しやすい文章を書くことを心がけて来た。同じことを伝えるのでも、言葉によって伝わり方は変わる。だからいくつもの言葉の中から吟味して、時には入れ替えて文章を書いて来た。いわゆる「推敲」というブラッシュアップ作業だ。音声ではその作業が出来ない。だからありのままの自分を晒け出すこととなる。

 言葉を綿密に選びながら書くことで表現出来ることと、思いつくままに話すことで伝えられること。気取った自分と素の自分。それらを上手く使い分けながら、これからもアウトプットを続けていきたい。

【Voicy「美味しいラジオ」】

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