秩序ある怖がり方したい

当noteは映画「貞子」の感想です。

それなりに話について言及するので、ネタバレを気にする人は読まないでください。


悪くなかったと思う。

それなりにいろんな文脈があって情報量が多くて面白かったし演技もよかった。でもすこし何か足りない気持ちもあるので酷評があるのもわかる。

トータルで上記の感想スタイルを一貫するので、褒めそやすものでも酷評でもない。あと、特に一貫性はなく書きたいことの羅列。

「貞子」が出てくる作品は、たしか初代「リング」とそのハリウッド版リメイク「ザ・リング」(貞子がサハラになってるやつ)と「貞子3D」(石原さとみが殺人モンスター貞子とバトるやつ)と「貞子vs伽椰子」(バケモンにはバケモンをぶつけんだよ!)しか見たことない。この段階でホラーファンに怒られそうだな…なので貞子ひいてはリングシリーズに思い入れがあるわけではない。ホラー映画が特別好きなわけでもない。

ホラー自体は好きなんだけど、映像媒体で見るより小説や怪談を延々聞くほうが好き。なのになぜ見に行ったかというと、刀剣乱舞の映画を見に行ったときに流れた予告映像がすごく良かったから。呪いのビデオが流れ、きっと来るの歌が流れて、めちゃくちゃに怖いやつ。下記です。

普通に怖いので再生は怖いの大丈夫な人だけ。

今回の貞子は本当に怖いぞというメッセージを強烈に突き付けられて、どうにも気になって行った。あと桐山漣が白衣着てるっぽかったし…(仮面ライダーが好きなオタクなので)ということで見に行った。いくつかツイッターにも書いたけど、改めてまとめようと思う。noteの練習だ。

1)YouTuberという要素

恐らく映画オリジナルの要素だと思う。題材として今この時代に敢えて貞子という作品でこれを扱って人気YouTuberを出すって…という安直さに拒否反応が出そうだけど、要素そのものは良いと思った。チープさもあるが悪くなかった。私が結構YouTubeを見るからかもしれないけど、作中滑稽にも感じられる和真(演:清水尋也)の動画の居たたまれなさも、今のYouTubeに実際にあるし、あの滑稽さとホラーの相性は良い。また、今回の貞子は寂しい子供の魂が大好物とあるが、YouTuberという子供に大人気の職業を実際に行っているYouTuberたちが貞子のターゲットになるのは納得がある。ただ水溜りボンドは大丈夫なのか? アレ、作中だと死ぬよな。それが語られなかったのが普通にええんか?と思った。

特に和真が心霊スポット凸に、物語の始まりである団地放火跡を選んだのには物語上の強引さを一瞬感じたが、呼ばれたという後半の説明だったり、彼が子供の心を忘れていないという描写が多く入れられると物語上の辻褄は合うなぁと思った。要するに貞子のターゲティングに合ったのがYouTuberたちだったんだろう。それの入り口に、鬱屈としていた和真が選ばれた。今回の作品はとにかく脚本の整合性だけはとれているような気がする。絶対に撮りたい映像先行だろうに…

和真が撮ってしまった貞子が写り込んだ放火跡の動画も非常に良かった。普通に怖いし、いろんな映り込みを考える余地がある動画っていい。御札がたくさん貼られていたり人形があったり、またリプレイのように何度もその箇所を見るのも「コワすぎ!」シリーズ(注:「貞子vs伽椰子」を手がけた白石晃士監督のオリジナルホラー映像作品群。めちゃくちゃおもしろいので見てほしい)を想起させて個人的に好きな手法だった。でもこれがしつこくて嫌い、という人もいるだろうし、評価が物凄く二分しそうだなと感じた。私はとてもワクワクした。ああいうのもっと見たいな…

2)なぜか安っぽくて不安になる点

前述のYouTube要素に安っぽさがあるのはホラーとして気味の悪さに繋がってとても味わいがあるんだけど、それ以外のいくつかに安っぽくて物語に集中できない箇所が気になった。

特に終盤、洞窟に行くシーンでの「立ち入り禁止」の立て札や内部の頭蓋骨といった小物の画面からの浮き具合が半端なかった。なんであんなに浮いていたんだろう。もう少し馴染ませるようなことはできないのだろうか。あまりにも風景に付け加えて浮いてる感がひどすぎて後半の展開の説得力の無さに繋がっていた。予算がないのか? そんなことないと思うんだけどな……最初からシネコンで上映されないような映画なら納得するけど、ここまで大きなプロモーションが仕掛けられているのに……なんで?

また、和真が貞子により海に引きずられるのを茉優(演:池田エライザ)と弟のアドバイザーである祐介(演:塚本高史)が二人で止めようとする終盤のシーンは、貞子が余りにも「人間」すぎて困惑した。それまでの貞子の描写はホラー界の女王らしい狂気に満ち溢れていたのに、突然その魔法が解けてしまったみたいだった。倉橋雅美(演:佐藤仁美)を呪い殺したときなど本当に怖かったのに…どうして突然普通にプールの取っ組み合いになったんだ……感動的なシーンのはずなのに普通に面白い絵面になっていて、本当にもったいなかった。

3)頭おかしい人の描写が最高

倉橋雅美の描写がめっちゃ良かった……佐藤仁美がうまいのかな!?

同性の若い精神科医に少しずつ依存し、接触し、手を握り、毎日部屋に不法侵入して花を換えて……はぁ……頭おかしい……最高…

そして最後にあれですよ。完全にキレてるのに「怒ってないっていってるでしょ!!!」と金切り声。怯える茉優も良かったです。前述の通りリング2とかは見てないし1を見たのも相当昔なんだけどそこからのキャラクターなんだよね。全然覚えてないからもう一度見てみようかな……と思うレベルで良かった。

あと祖父江初子(演:ともさかりえ)もよかった。冒頭で頭おかしいことを言ってる割に眼がそんなに死んでないので何なんだろうと思ってたけど、彼女的には正義の行動なんだろうな……と思った。娘を監禁して無理心中するのは最悪だけど。


4)先輩精神科医の藤井(演:桐山漣)は何だったの?

これがマジで分からなかった。なんのための役? いや、かっこいいし茉優を助けてくれるのも良かったけど、本筋に絡んでいそうで全く絡んでいない気がした……

茉優に倉橋のことでアドバイスをしたり話をしたりしてくれたのは良かったけど、結局貞子を見ていないし、この映画そのものの本筋には全く関わってなかったよね……?少女(演:姫嶋ひめか)が倒れたあたりからそちらの筋からストーリーに関わるのかと思ったらそれもなく……

かっこいいけど、なんだったんだ……? 茉優と一緒に洞窟に行くのもまさかの和真の友達の祐介だし……何枠だったの……? めちゃくちゃもったいない!! なに!?

5)終わりに映画に関係ない話

大体こんなもんかな。オチについては貞子の格を落とすわけにもいかないのでああいうことになるんだろうな、と思っていたから想定内だった。とにかく池田エライザの恐怖演技が良かったし細かい描写も好みだったので、トータルの満足度は結構高い。

ただこれは映画そのものには全然関係ないけど、まじで見に行った映画館の治安が悪くて終わっていた。月曜の夕方頃だったけど、学生の集団がいて予告の段階から喋っていてからうるせーと思っていたけどまさか本編が始まっても普通に話しているとは思わなかった。応援上映回か? と焦ってしまったぐらいだった。

でも応援上映みたいに叫ぶと言うよりも、家でわーきゃー言いながら見る感じで、ずっとこそこそ話して、貞子が出てきたらきゃーと叫んだり、何もない静寂のシーンでわって脅かしたりとか、こう……個人の上映会ならわかるけどっていうことが繰り広げられていたのだ。こういうときって、映画館のスタッフを呼べばよかったのかな…? こういう場面に出くわしたこと自体がなかったから困った。映画「貞子」が悪いわけじゃないけど、多分二度と邦ホラーを映画館で見ることはないと思う……

多少の悲鳴は作品の特性上わかるんだけど、遊園地のお化け屋敷みたいに叫ぶために来るのはちょっと違うよなと思った。

あと、周囲の友人がホラーにそこまで興味があるわけじゃないし、映画は結構一人で見るのが好きなので普通に女ひとりで見に行ったんだけど、その学生の集団から「あのひと一人で来るってまじすぎじゃね?」みたいなことを言われた気がした。

落ち込むというよりも、あまりにもTwitterで見るエピソードすぎて「Twitterかよ」って思ったけど、よく考えたら普通にバチ切れてよかったな……

てか本当に言われたのかな? あまりにもインターネットでぶっ叩かれそうなエピソードすぎて私自身嘘なんじゃと不安になってきたな。それなりに面白かったのにこんな思いをするのでは、普通にDVDで見たら良かったなぁてなるので、最初から声出しOK上映とそうじゃない上映を企画してほしかった気がする。みんなならこんな時どうするの? まじで正解を教えてほしい。


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