フレデリック ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2023 ライブレポート

8月6日、 ROCK IN ON JAPAN FESTIVAL2023 DAY2は、太陽の暑さを存分に感じる中で急な雨も降ってくる、非常にサバイバルな環境の中で開催された。
PARK STAGEでのフレデリックのライブは、そんな雨すらも味方につけ、攻めの姿勢で、観客の心と身体を踊らせた。だけど、ただ盛り上げるだけじゃない。音楽はもっと自由に楽しめるという可能性を示した、彼らの真骨頂が発揮された30分だった。

DAY2 8/6 16:30- PARK STAGE フレデリック

直前にすぐ隣のHILLSIDE STAGEで行われたKANA-BOONの演奏やMCを、楽しむ表情を時折見せながら、フレデリックのメンバーが準備をしていた。特に赤頭隆司(Gt)は、終演のタイミングで小さく拍手も送っており、非常に微笑ましかった。三原健司(Vo/Gt)が「鮪くんお疲れ!」と、ねぎらいの言葉をかけるとPARK STAGEからKANA-BOONを聴いていた大勢の観客から笑いと拍手が起きる。普段から親交がある仲間から、最高のかたちでバトンを受け継ぐようにして、フレデリックのリハーサルが始まった。

雨が降り出す中、各々の楽器を鳴らす様子からすでにセッションが始まっているような雰囲気。準備が整うと、高橋武(Dr)のスティックによるカウントを合図に「リリリピート」が鳴り響く。ピッタリそろった手拍子や合いの手が巻き起こり、この時間、この場所を明確な意思で選んだ人たちで溢れていることを感じさせた。曲が終わり、一瞬の静寂の中”何の曲がくるかな・・・”という隣の2人組の会話を聴きながら、自分自身もわくわくしていると、煌びやかなシンバルを4つ打った後、耳にしたことがあるギターリフを聴いてすぐに確信した。これは、フジファブリックの「銀河」だ。
隣の2人組は”マジか”"そっちの銀河か"と興奮していたが(フレデリックには「銀河の果てに連れ去って!」という楽曲があり最近リハでやることが多め)、まったく同じ気持ちだった。健司の<タッタッタッ タラッタラッタッタッ>という歌と三原康司(Ba)の太くリズミカルなベースラインの絡み合いが新鮮で面白し、フレデリックとフジファブリックはやはり相性がいいなと、ついさっきフジファブリックのステージで「瞳のランデヴー」のJAMリベンジコラボを観たときの感情に太鼓判を押してもらえた。フレデリックの前にPARK STAGEでライブしたフジファブリックの楽曲をリハでやってしまうという、予想できない粋な演出に、これだからフェスでフレデリックを観るのやめられないんだよなと、本番前から幸せを噛みしめていた。

フレデリックの世界観が詰まったSE、そしてお馴染みの”フレデリックはじめます”というフレデリック流のあいさつでメンバーが登場。ドラムとベースの地を這うようなイントロアレンジ、昨年のロッキンではラストに披露した「オドループ」を1曲目に持ってきたので、度肝を抜かれた。サビでの大合唱や、赤頭のギターソロで沸き立つ歓声は、すでに最高潮の盛り上がりだった。最初に「オドループ」を放ってしまうスタンス、健司の”俺らがオドループしかないバンドと思っているんだったら、他のバンド行ってもご飯食べてもいい。そうじゃないと少しでも思うんやったら、今日一番全力出し切ってもらっていいですか。0か100でいきましょう!やるかやらないか、よろしくおねがいします。”というMCからも、本気で攻めのライブをするという気合が感じられた。

勢いを止めることなく、彼らのライブは2曲目の「KITAKU BEATS」でさらに熱を帯びていった。いつもは””遊ぶ遊ばない?遊ぶよな!”と煽ることが多いこの曲の冒頭に、”フレデリックについてこれるかー!!”と健司が叫ぶ。本日は完全に魔王モードである。2番のAメロでは隆司が康司の正面に立ったり、自分たちがまず遊びきっているところも魅力的だ。アウトロから流れるようにして、高橋のドラムがうまく切り替え、康司のインパクトあるベーススラップから3曲目の「ジャンキー」に紡がれていく様は、息継ぎや休憩の間を与えず、フレデリックの音楽にどうぞこのまま染められてくださいと言わんばかりだ。

空気をがらりと変えたのは、4曲目のオクターブ下げたアレンジバージョンの「ナイトステップ」だった。落ち着いたベースとドラムと観客のクラップがじわじわと響く中、”ロックインジャパン、鳴りを強めて、盛り上げるだけがダンスミュージックじゃないですよね。わーって煽って、がーって盛り上がるのだけがロックじゃないですよね。音楽のとらえ方はいろいろあります。その中で、自分たちがこれだと思う音楽を30分に込めて参りました”健司のMCは、今日のステージだけでなく、フレデリックのバンドとして大切にしている根幹の部分だと思った。音を引き算することで、どこまでも自由を感じさせるようなゆとりのある、フレデリックにしかできないやり方の踊らせる音楽がそこにはあった。ゆらゆら揺れる人、静かな音の中でも手を挙げる人、下を向いて頭を揺らす人、目をつむって頷くようにしている人、同じ曲の中で観客それぞれが、周りを気にせず好きなように音を楽しむ姿に、この空間がずっと続けばいいのにと思った。シンセサイザーの音が小さくなり、ちらほら拍手が聴こえる中、高橋のドラムの音だけが響いた。この素晴らしい「ナイトステップ」にすぐさま拍手をしたいそわそわした気持ち、終わってしまうのが惜しい気持ち、そんな観客の気持ちを受け取るかのようにして、テンポをゆるめ、最後のキックの一音まで味わい尽くせる高橋のドラムは圧巻だった。

残り2曲となったところで、”ロッキンで一番最高やったライブをやりたいんじゃなくて、今までの人生で一番最高やったってのがフレデリックでありたいんです!”と終盤も緩むことなく、健司がさらに盛り上げて「Wake Me Up」になだれこむ。健司の歌い方も、遊び心あるアレンジたっぷりで、<Wake Me Up>と連呼するところでは、声のトーンを落としながら姿勢を低くするなど全身を使った表現に、魅了された。

最後は、健司が”俺たちは常に今が一番かっこいいバンドでありたいと思っていますだから今日は新曲で終わりたいなと思っております!”と宣言し、2023年の代表曲「スパークルダンサー」で鮮烈に締めくくった。赤頭の軽快なカッティングギター、底から這い上がるような康司のベース、キメの切れ味のよさが際立つ高橋のドラム、曲調によって豊かな表情をみせる健司のボーカル、全てが”今が一番”を体現している。サビで健司が大きく両手を振ると、それに合わせて観客もワイパーのように手を振りながら、<のってけ のってけ>とシンガロングの一体感が気持ちいい。このままフレデリックの奏でるミュージックにのって、どこまでも行ってしまいたい。この屋外の会場にはミラーボールはないけれど、ギラギラと輝くフレデリックの音楽自体が、ミラーボールのように私たちを照らし、踊らせていた。

今回のロッキンでの30分間のステージは、間違いなく、フレデリックというバンドの真骨頂を発揮したものだった。これだから、フェスでフレデリックを観るのはやめられない。だからこそ、来年のロッキンでは、もっと大きなステージで、もっと長い時間フレデリックを観たい!!そんな欲張りなことを願ってしまうのだ。

2023.08.06 『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』 フレデリック セットリスト

リハ
リリリピート
銀河(フジファブリック(cover)

本編
01.オドループ
02.KITAKU BEATS
03.ジャンキー
04.ナイトステップ
05.Wake Me Up
06.スパークルダンサー

11月から全国ツアー開催!!



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